「ただいまー」
「あっ！！お帰りなさいご主人様ぁ！！」
　その日、俺が学校から帰ってくると、いつも以上に嬉しそうな笑顔を浮かべたエイミーが俺に抱きついてきた。
「どうしたんだエイミー？何かいいことでもあったのか？」
「はいっ！！エイミー、今日町中でお友達と会ったんですぅ！！」
　エイミーは目を輝かせながら、俺に話かける。
　どうやらその話を俺に聞かせたくて聞かせたくてしょうがないようで、しがみついた腕を離そうとしてくれない。
　まったく、困った奴だ。
「それでそれで、カリンちゃん、あっ、エイミーのお友達カリンちゃんって言う名前なんですけどぉ、カリンちゃんも召喚されてこっちの世界にやってきたんですってっ！！エイミーの隣の街に住んでるなんて、すっごい偶然だと思いませんかご主人様ぁ！？」
　エイミーはまるで自分のことのように喜んでいる。よっぽどその『お友達』と仲がよかったんだろう。
「で、そのお友達って言うのはエイミーと同じドジでマヌケでペッタンなのか？」
「エイミーペッタンじゃないですぅ〜！！」
　エイミーは自己主張するように、腕を自分の胸へと押し当てる。
　今日は心に余裕があるからまだまだ大丈夫だが、これが切羽詰ってた時だったらかなりヤバかっただろう。
「カリンちゃんは、エイミーよりもずううっとかわいくって、頭がよくって、おムネがおっきい悪魔なんですよぉ〜」
「へーそうなのか。ってことは、どんどん魂を狩り取ってるってわけか。俺は相手がエイミーでよかったよ」
「エイミーも、ご主人様が相手でよかったですぅ！！」
　皮肉を言ったつもりなのに、エイミーはすっかり舞い上がって頬を赤らめている。
「それでねそれでね、ご主人様ぁ。カリンちゃんのご主人様もぉ、ご主人様みたいに恥ずかしがりやさんなんですってぇ〜」
「ほ〜？そうなのか？」
「はい！！だからエイミーも、カリンちゃんを見倣うことにしましたぁ！！」
　エイミーは腕を掴む力を、さらに強める。
　ひょっとして色仕掛けか？無駄なことを……
「エイミー、そんなことしたって無駄だぞ？俺は絶対、願い事なんて言わないからな」
「別にかまいませんよぉ〜。エイミー、もう叶えちゃいましたから」
「えっ！？」
　エイミーのとんでもない言葉に、俺は一瞬動きを止める。
　俺、何か願い事なんて言ったっけかな？……いいや！！覚えがないぞ！！まったく！！
「願いって、なんだよ一体！？」
「えーっとぉ、ひとつ目は『ご主人様の恋人になることぉ』、ふたつ目は『ずーっと一緒にいることぉ』でぇ、みっつ目は『魂をとらない』ってことですぅ」
「な、なんだそりゃ！？３番目はともかく、１番目と２番目は、俺は願ってない！！」
「いいえ！！ご主人様の願いは、エイミーの願いと同じですぅ！！」
　エイミーは恥ずかしそうに言うと、引っ付いたまま決して俺から離れようとはしなかった。