真人「（あーあ・・・無理やりつれてこられちゃったよ・・・）」
沙夜姫「どうしたの？　そんな不服そうな顔して」
真人「いや・・・別に・・・」
沙夜姫「まぁ、そんなマーくんの顔も嫌いじゃないけどね」
真人「はぁ・・・」
　そんなに俺の顔って面白いかなぁ？
　まぁ、この人の場合、俺をからかって楽しむ、ってことがあるんだろうけど。
　それにしても、この席はないよなぁ・・・
　店の中ガラガラだっていうのに、迷わず窓際の席へ一直線、だし。
　何かトラブルの予感がする・・・
店員「いらっしゃいませー。　ご注文はお決まりでしょうかー？」
真人「えーっと・・・」
沙夜姫「メロンソーダタイプＣ１つで」
店員「メロンソーダタイプＣ１つですねー？　はーいかしこまりましたー」
真人「えっ？　ちょ、ちょっと・・・」
　ああ、行っちゃったよ・・・俺、まだ何も頼んでないのに。
真人「沙夜姫先輩、どーゆーつもりだよ？」
沙夜姫「まあまあ。　慌てない慌てない」
真人「いや、別に慌ててないけど、俺朝飯頼みたかったんだけど・・・」
沙夜姫「じゃあ、ジュースがきた後頼めばいいよ」
真人「ジュースがきたあとねぇ・・・」
　まったく、この人は何考えてるかわからない。
　慌てない慌てないって・・・どこぞのトンチのアニメじゃあるまいし。
　あーあ。頬杖なんかついてニコニコしちゃって。
　何がそんなに嬉しいんだか・・・ん？　待てよ？
　何でジュースをひとつしか頼まなかったんだ？
　オマケにタイプＣ？
　何だよそのタイプＣって？　メニューには載ってなかったぞ？
　・・・なんだか激しく嫌な予感がする・・・
店員「お待たせしましたー。　メロンソーダタイプＣになりまーす」
真人「・・・・・・！」
店員「ご注文は以上でよろしいでしょうかー？」
沙夜姫「はい。　以上でーす」
店員「それではごゆっくりどうぞー」
真人「・・・・・・」
　やられた・・・見事に沙夜姫先輩に、やられた・・・
　運ばれてきたメロンソーダは、普通のと比べてコップがちょっと大きいといったところ以外は、普通のメロンソーダだ。
　でも、ストローが二本、コップの中に入っている。
　しかも俺と沙夜姫先輩に向き合うように折り曲げられて・・・！
　これってやっぱり・・・
沙夜姫「さぁ、飲みましょ」
　ああ、やっぱり・・・嬉しそうにストロー咥えちゃって・・・
　これって一緒に飲めってことだよな・・・
真人「あ、あの・・・俺、遠慮させてもらうよ」
沙夜姫「えー！？　どうしてー！？」
　やっぱりというか、沙夜姫先輩は不満の声を上げる。
　いや、そんな不満の声を上げられても困るんですけど。
　そんなこっぱずかしいこと、出来ないし。
沙夜姫「ヒドイ・・・マーくんは、あたしと一緒にジュースを飲めないって言うのね！？　あんまりだわ！！」
真人「わわわっ！！　ちょ、ちょっと！！」
沙夜姫「いいわよいいわよ！！　どーせあたしは捨てられた女なんだから！！」
　沙夜姫先輩は泣き喚く。
　ああ、周りの視線が一気に俺達に集中してるし！
真人「わ、わかったから！！　一緒に飲むから、もうやめてよ！！」
沙夜姫「ホント！？」
　途端に笑顔になる沙夜姫先輩。
　やっぱりウソ泣きだったか・・・
　わかってはいても、あの状況では冤罪をかけられる確率１２０％なので、どうしようもなかったりするんだけど・・・
沙夜姫「それじゃあ、マーくん」
　沙夜姫先輩は嬉しそうに微笑みながら、頬杖をついてストローを口に咥える。
真人「（ああ・・・今日は厄日だ・・・）」
　俺も仕方なく、ストローを口に咥える。

　チュー

　吸い上げられて、見る見るコップの中から減って行くメロンソーダ。
　正直、すきっ腹に炭酸モノはかなりきついんだけど・・・

　ズズズズズ

　そしてあっという間に、コップの中は氷だけに。

真人「・・・これで満足した？」
沙夜姫「うーん・・・満足は満足だけど、ちょっと不満かな？」
真人「不満って、何が？」
沙夜姫「窓の外であたしのことジーっとみてる人がいるのよ」
真人「窓の外？　・・・げっ！！」
　ああっ、なんてことだ！！　よりにもよって、芹里香にこんなシーンを目撃されるとは！！
　ああ・・・芹里香の奴ピクピク震えてるよ・・・こりゃ大噴火間違い無しだな・・・
沙夜姫「はーい」
　さらに、芹里香の怒りに火に油を注ぐかのごとく、笑顔で手を振る沙夜姫先輩。
芹里香「！！」
　芹里香は途端に駆け出し、喫茶店の中へと乗り込んでくる。
芹里香「お兄ちゃん！！　天宮先輩！！　何やってるの！！」
　そしていきなり大噴火モードで俺達に詰め寄ってくる。
沙夜姫「コラ！　『天宮先輩』じゃなくて『お姉ちゃん』でしょ？　何回言えばわかるの？　メッ！」
　そんな芹里香に対し、沙夜姫先輩は悪戯っぽく睨む。
芹里香「天宮先輩は芹里香のお姉ちゃんじゃないもん！！」
　芹里香は沙夜姫先輩の発言を力一杯否定すると、俺を睨みつける。
芹里香「お兄ちゃんもお兄ちゃんよ！！　こんな人の誘いにホイホイついて行くなんて！！　節操なさ過ぎ！！」
真人「バ、バカ！　ついてきたわけじゃない！！　成り行きで無理やり連れて来られたんだ！！」
沙夜姫「そうよ芹里香ちゃん。　あたしとマーくんはデート中なんだから、邪魔しないで頂戴。　それに、中学生が喫茶店に入ってくるのは感心しないわよ？」
芹里香「芹里香邪魔なんかしてないもん！！」
　そして毎度の如く芹里香と沙夜姫先輩のバトルが展開される。
真人「・・・はぁ・・・」
　やっぱり今日は、最悪の日曜日だ。こんなことならコンビニなんかに行くんじゃなかった・・・

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