それは遠い異国の地に残された言い伝え。
古の番人護りし地に、神より力を授かりし聖者あり。
その聖者の作りし秘薬は、疫病を駆逐し、人を超えた力を与え、死人をも生き返らせたという。
だがその力故、その聖者は人前には姿を現すことは滅多になかった。
それ故、もし聖者の作りし秘薬を手に入れたくば、星煌く満月の夜に、聖水で両手を清め、森の妖精達との晩餐会に臨まなければならなかったという。
そして無事聖者の下に辿り着けた場合は秘薬を手にできるが、もし失敗した場合は、二度と覚めることのない永遠の眠りにつく。
だから人々は、余程のことがない限り、その地に近づくことはなかった。
それは遠い異国の地に残された言い伝え。
人々の記憶から風化しようとしている、遠い昔の物語。
だが、彼らは知らない。
その聖者に、弟子が存在したということを――。
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