「ふわぁ〜……今日もいい天気だなぁ」
　ある晴れた休日の昼下がり、修輔は大きく欠伸をしながら本屋へと入っていった。
　家にいても特にやることもなく、かといって誰かと約束しているわけでもない。
　そこで修輔は、本屋に行って退屈を紛らわせることにしたのである。
「何か面白そうなのは……っと」
　修輔はキョロキョロと本棚を見回しながら、店の中を歩き回る。
「そう言えば、最近静流ちゃん関係の本読んでないなぁ……わっ？」
　不意に、本棚の死角から人影が現れ、修輔とぶつかった。
「きゃ？」
　かわいらしい声を上げて、その人影は倒れこむ。
「あ、ゴメン。大丈夫……あっ？」
　その人影を見て、修輔は絶句する。
　それは修輔の幼馴染、彩葉であった。
「イタタタタ……」
　眼鏡をかけた彩葉は尻餅をつきながらおでこをさする。
「だ、大丈夫か、彩葉……」
　修輔はいつもと違う彩葉の姿にドキドキしながら、彼女に手を差し伸べる。
「う、うん……」
　彩葉は修輔の手を握ると、ゆっくりと起き上がった。
「ゴメンね、修ちゃん。ちょっと考え事してたものだから」
「い、いや、こっちこそ悪かったよ。でもお前、視力悪かったんだ？」
「えへへ……バレちゃった」
　彩葉は恥ずかしそうに笑う。
「本当は修ちゃんには秘密にしておきたかったんだけど」
「どうして？」
「だって……修ちゃん、メガネっ娘ってあんまり好きそうじゃないから……」
　彩葉は恥じらいの仕草を見せる
「そそ、そんなことないよ。彩葉、とってもかわいいよ」
　修輔はその仕草にドキドキしながら、しどろもどろに答える。
「そう？……よかった……」
　彩葉はニコッと微笑んだ。
　その表情に、修輔の鼓動はさらに高鳴る。
（落ち着け、落ち着け俺……何彩葉にときめいているんだ……）
「ねぇ。修ちゃん、時間ある？」
「え？あ、う、うん」
　彩葉の言葉に、修輔は思わず首を縦に振る。
「それじゃあ、これから駅前の喫茶店に行きましょ。新作のケーキがメニューに追加されたんですって」
「え？」
　修輔はその言葉に、身構える。この流れで行けば、デートになってしまうことは目に見えていた。
「そ、それはちょっと……」
「ダメ……かな？」
　彩葉は上目遣いで修輔を見る。
「わ、わかったよ。仕方ないなぁ」
　修輔はため息をついた。
「わーい。修ちゃん大好き！」
　彩葉は修輔に抱きつく。
「こ、こら！みんなが見てるって！」
「さ、行きましょ」
　修輔の抗議などお構い無しに、彩葉は腕を組んだまま歩き出す。
「ちぃぃ！ここは公衆の面前だっつーの！お前らの恋愛広場じゃねえんだよ！」
　そんな二人を、奈緒がこっそり監視しているのであった