ふふふ〜ん♪
　やっぱごろ寝しながら漫画読むのって楽しいな。
　誰にも邪魔されない、真琴だけの時間。
　漫画っておもしろいし、色々勉強になる。
　イタズラの仕方とか、気持ちの伝え方とか、真琴の知らないことがいっぱい載ってて。
　あっ、そうだ。いいこと思いついちゃった。
　この漫画のようなイタズラ、祐一にもしてやろ〜っと。
　この前も真琴のお風呂覗いたし。
　うん。決まり。そうしよっと。
　時間は……っと。そろそろ祐一が帰ってくる時間だ。
　早速準備しなくっちゃ。
　まずはこれもってキッチンにいって……あったあった。
　御釜の中にご飯たっくさん。
　今日はマラソン大会があるとかいってたから、きっと祐一お腹すかしてるよね。
　だから、真琴の特性唐辛子おにぎりを食べてもらって元気になってもらうの。
　祐一ってお子様だからちょっと刺激が強すぎるかもね。
　いっつも真琴のことお子様扱いするから、丁度いいかな？
　ご飯は……これくらいでいっかな？
　具はもちろん唐辛子たっぷり入れて……うん、バッチし。
　後はにぎれば……うんしょうんしょ……
　あれ？なんだかイメージしてたのと違う……
　あう〜……うまく握れないよぉ……
　おかしいなぁ。秋子さんがいつもやってるとおりにやってるはずなのに……
　なんでちゃんとした形にならないんだろ？
　うんしょうんしょ……
　あぅ〜……ボロボロだぁ……
「ただいま」
　あっ、帰ってきちゃった。
　あぅ〜……どうしよ……
「あー腹減った腹減った……あれ？真琴、お前なにやってるんだ？」
　ヤバヤバっ！みつかっちゃった。
「あ、あはは……祐一、お帰り」
「なんだよ。気味悪い笑い声だしやがって。ん？なんだそのボロボロのおにぎりは？」
「え、えっと、あの、その、これは……」
「ははーん。さては腹が減って自分で握り飯でも作って食おうとしてたな？まったく卑しいヤツだな」
「ち、違うの。これは、その……」
「なんだよ？それじゃあおにぎり握る練習でもしてたのか？」
「えっと、そうじゃなくって……これ、祐一に食べてもらおうと思って……」
「はぁ？俺に？」
「祐一、お腹すかせて帰ってくると思ったから……」
「真琴……お前……」
　あぅ〜……これじゃあ完全に嘘だってバレバレだよぅ。
　今回の作戦は失敗、かな？
「ありがとな、真琴」
「えっ？」
「いや、俺のためにこんなことして待っててくれるなんて」
「と、当然よ。真琴だってこれでも一応、祐一のこと心配してあげてるんだから」
　意外な展開。ひょっとしてひょっとするかも？
「へいへいありがとさんよ。でももーちょっとキレイに握って欲しかったな」
「悪かったわね。イ〜っだ」
「相変わらず素直じゃないな。そんじゃま、いっただっきます」
　やった。食べた。しかも大口で。
「★％＊▽＃＃□☆！！！」
「きゃほ〜♪」
「みみみ、水！水くれ！！」
「はい、これ♪」
「よ、よこせ！！ゴクゴクゴクゴクゴク……うっ！！」
「祐一、どうしたの？」
「真琴……これ、なんだ？」
「真琴が飼ってるミジンコ♪」
「うげっ！！ててて、テメエ！！」
「やーいザマミロ。でもこれで復讐は終わりじゃないんだから」
「なんだと！？」
「わー、怒った怒った。さてっと、漫画の続き読まなくっちゃ」
「ま、真琴！！待ちやがれ！！」
「やっだよぉ〜」
　きゃはは。
　どれくらいぶりだろ。
　こんなに楽しいこと。
　こんなに嬉いこと。
　でもこれで終わりじゃないんだから。

「ごちそーさま」
　楽しかった夕ご飯。
　お腹いっぱいでもうなにもはいらない。
　やっぱり秋子さんの作る料理って、とってもオイシイ。
　ふわぁ〜、とっても幸せ。
　祐一、食事中ずっと不機嫌そうに真琴のこと睨んでたっけ。
　仕返しすることでも考えてたのかな？
　いっつも真琴の気持ちなんて、考えてないんだから。
　……祐一のおバカ。
「おい、真琴」
「なーに祐一？」
「食い終わったんだから、はよ風呂入れ」
「あっ、うん」
　ほーら早速きた。
　きっと真琴がお風呂に入ってる時一緒に入るつもりなんだ。
　でも、もうその手には引っかかりませんよーだ。
　真琴がなんでこんなに時間かけてご飯食べたと思ってるのよ。
　祐一に赤っ恥かかせてやるんだから。
「それじゃあ早速入ってくるね」
　お風呂の方は……うん、名雪が入ってるみたい。
　これで準備はよしっと。
　後は部屋で待ってるだけ。
　どきどき。
　わくわく。
　まだかな。まだかな。
　あう〜……なんだか緊張する……
　祐一、早くしないと予定が狂っちゃうじゃないの。
「きゃーーーーーーーーーーーー！！」
　あっ！今のって名雪の悲鳴！！
　うん、作戦通り！！
　急いでお風呂場に行かなくっちゃ！
　ぷぷぷ……祐一ってばどんな間抜けな表情してるんだろ。
「ゆ、祐一！！なにやってるんだよ〜！！」
「ま、待て名雪！これは誤解だ！！」
「いいから早くでてって！！」
「あ〜〜〜っ！！」
　思わず顔がほころぶ。
　名雪と祐一の決定的瞬間。
　もちろん二人とも裸。
「祐一が名雪を襲ってる〜！！」
「バ、バカ！！俺は風呂に入ってるのがお前だと思って……」
「真琴だったら許されるわけ！？変なこと言わないでよ、この変態！！」
「お、お前、謀ったな！？」
「なんのことかしら？祐一のへんたーい」
「祐一……もう知らない！！」
「あっ、な、名雪！！」
「あーあ。怒らせちゃった」
「も、元はと言えばお前がだな！！」
「なによぅ。全部祐一がいけないんじゃないの」
「ぐっ……！！」
「さーて、面白いもの見せてもらったから、真琴は部屋にもどろーっと」
「お、覚えてろよ……」
「すぐに忘れるもーん♪」
　きっもち〜。
　完全勝利って感じ。
　祐一、なんにも言い返せないし。
　今夜はなんだか久しぶりに気持ちよく眠れそう。
　それもこれも、全部祐一のおかげ。
　今までの恨み、倍にして返してやったんだから。
　あーあ、明日はどんなイタズラしよっかな。
　また漫画本でも読んでゆっくり考えることにしよっと。