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「ふー……」 長い長い溜息が、俺の口から漏れていく。 これで何度目だろう。別に俺だって溜息をつきたくてついてるわけじゃないんだ。 そう……俺に力が……もっと力があればこんなに悩まなくてすむのに…… 「あの……悩み事……ですか？」 「ん？」 不意に声をかけてきた少女は、かりんであった。 かりんは酷く心配そうな面持ちで、俺のことを見つめている。 「あの、立ち聞きするつもりじゃなかったんですけど、牧村さんとっても深刻そうな表情で『力がほしい』とかおっしゃってましたので……」 「ああ……そのことか……」 俺は再び軽く溜息をつく。どうやら無意識のうちに言葉に出してしまったらしい。 「そうだよなぁ……もっと力があれば、あいつを倒すことが出来るのに……」 「牧村さん……」 かりんは今にも泣き出しそうな悲しげな表情を浮かべていたが、やがて笑顔になると、力強い言葉を発した。 「わかりました！！私、牧村さんの修行のお供をさせていただきます！！」 「ええっ！？」 俺はかりんの突然の申し出に、目を丸くせずにはいられなかった。 まさかかりんがそんなことを言い出すなんて……やっぱりかりんの奴、俺のことを…… 「そりゃ助かるよ。かりん、よろしく頼むぜ」 「はい！！」 かりんは嬉しそうに元気よく答える。 「それで牧村さん、いつから修行を始めますか？」 「これからでいいんじゃねえか？」 「えっ？これから、ですか？」 「都合悪いかな？」 「い、いいえ！！大丈夫です！！」 「そうか。よかった。それじゃあ早速行こうか」 「えっ？行く……って、どこへですか？」 「決まってるだろ。ゲーセン」 「ゲ、ゲーセン！？」 何故かかりんはとても驚いたように目を丸くする。 「そ。ゲーセン。最近はまった格ゲーのラスボスがどーしても倒せなくってさ。いやぁ、かりんがデートしてくれるなんて、おれもとっても力が入るってもんだよ」 「デ、デ、デ、デート！！！？」 かりんは何を勘違いしてたのか、デートと言う言葉を聞くと文字通り茹でた蛸の如く、表情を真っ赤にして無言になってしまった。 夕陽に照らされたそんなかりんの顔を見ながら、かわいいなぁと俺は思わずにはいられないのであった。 |
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