桜も咲き始めた、ある麗らかな春の日の午後。
　十代、翔、隼人のオシリスレッドの３人は、同じオシリスレッドの万丈目サンダー、さらにラーイエローの三沢大地とともに、卒業を控えたオベリスクブルーのカイザー丸藤亮の卒業記念親睦会と称して温泉へとやってきていた。
　そこでデュエルの話題に花が咲き始めた頃、ハネクリボーの悪戯によってみんなが精霊の世界に連れ込まれて……

　気がつくと、カイザーはいつの間にか制服を着ていた。
　手には何故かデュエルディスクがはめられている。
「これは……」
　いぶかしむカイザーの下へ、誰かが近寄ってくる。
「貴様がカイザーとやらか？」
「お前は……？」
　カイザーは突然目の前に現れた相手に対して身構える。
「カイバーマン！！」
　十代が懐かしそうにその名前を叫んだ。
「久しぶりだな、遊城十代。セブンスターズとの戦いでの活躍、この俺の耳にも入っていたぞ」
　カイバーマンは十代を見てニヤリと笑うと、再びカイザーを見据える。
「それに比べて、お前はどうだ？丸藤亮。聞けばお前はカミューラなる吸血鬼にデュエルに負けたそうじゃないか。そんなに弟が人質にとられたことが重荷だったのか？それとも闇のデュエルとやらが怖かったのか？フン、学園最強が聞いて呆れる」
「くっ……！」
「恥を知れ！！己が頂点を目指すと言うのなら、この俺を乗り越えていけ！！」
　カイバーマンはビシッとカイザーを指差す。
「アニキ、またアイツあんなこと言ってますよ」
　翔がそっと十代に囁いた。
「相変わらずなんだな」
　隼人も苦笑する。
「……いいだろう。この勝負、受けて立つ！」
　カイザーは身構え、デッキにカードをセットし、デュエルディスクをオープンさせる。
「ふっ……鮫島がどの程度鍛え上げてるのか、試してくれるわ」
　カイバーマンもデュエルディスクをオープンする。
「気をつけろカイザー。そいつのデッキは、海馬瀬人のデッキそのものだ」
「何……？」
　十代の言葉にカイザーは一瞬驚愕の表情を見せ、ジッとカイバーマンを見据えた。
「海馬瀬人……って、あの伝説の？」
　三沢が驚いたように、十代に尋ねる。
「ああ。アイツのデッキは、かなり強力だ」
　十代は以前のデュエルを思い出しながら、三沢の言葉に頷く。
「でも結局、十代は３ターンでやられちまったけどな」
　そこへサンダーが偉そうな態度で割り込んでくる。
「……どうやら自信の程は口だけじゃなさそうだな……勝負だ、カイバーマン！」
「返り討ちにしてくれる！」
『デュエル！！』
　対峙する二人の間に、殺気にも似た緊張感が生まれる。
　先行をとったのはカイバーマンであった。
「俺の先行！！ドロー！！俺はＸ‐ヘッド・キャノンを攻撃表示で召喚！さらに、リバースカードを１枚伏せ、ターンエンド！！」
「俺のターン、ドロー！！」
　カイザーはカードをドローし、動きを止める。
「どうした？もう降参か？」
　カイバーマンは余裕の態度を見せながらカイザーの表情を窺っている。
（カイバーマンのデッキが海馬瀬人のデッキそのものだということは、当然アレも入っているはず。ならばアレを召喚される前にケリをつけなければ。）
　カイザーは短期決戦に持ち込むことを決め、一気に勝負に出ることにした。
「俺は、手札からマジックカード『パワーボンド』発動！手札のサイバードラゴン三体を融合し、サイバーエンドドラゴンを召喚する！！」
　カイザーはそう高らかに宣言し、彼の最強カードであるサイバーエンドドラゴンを融合召喚した。
「パワーボンドの効果発動。このカードによって融合されたモンスターは、その攻撃力が２倍となる！」
「なにぃ！？攻撃力８０００だとぉ！？」
　いきなり攻撃力８０００のモンスターを召喚されて、流石のカイバーマンもうろたえる。
「行くぞ！！サイバーエンドドラゴンの攻撃！」
　カイザーは攻撃宣言を行った。
「リバースカードオープン！攻撃の無力化！！」
　しかしカイバーマンは、いともあっさりと防いでしまう。
「速攻魔法！！融合解除！！」
　カイザーはすぐさま融合を解き、場に三体のサイバードラゴンが現れた。
「カードを１枚伏せて、ターンエンド」
「行くぞ！！俺のターン！！」
　カイバーマンはデッキからカードをドローする。
　そして今度はカイバーマンの動きが止まった。
「ふっふっふっ……ここまでよくやったと誉めてやろう。この俺に恐れを抱かず向かってきた、しかも１ターンキルを狙ってきたその意気はよしとしなければな。さすがナンバー１の称号を持つことだけはある。だがここまでだ、丸藤亮」
「ま、まさか……」
「伝説を見せてやろう……俺は、手札からマジックカード『融合』を発動！！手札のブルーアイズホワイトドラゴン３体を融合！！」
「！！」
「見るがいい……そして戦くがいい！！いでよ！！ブルーアイズアルティメットドラゴン！！」
　カイバーマンはためらうことなく究極のドラゴンを召喚する。
「アレが……アルティメット……」
　その迫力にカイザーも息を呑んだ。
「ブルーアイズアルティメットドラゴンでサイバードラゴンを攻撃！！アルティメットバースト！！」
「トラップカードオープン！！ドレインシールド！！このカードは相手モンスター１体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復する！」
「うまい！！これなら攻撃を受けずに、逆にライフを回復できる！！」
　三沢が思わず声を上げる。
「ふっ……甘いな」
　しかしカイバーマンは慌てなかった。
「手札から速攻魔法『融合解除』発動！」
「なっ……」
　ブルーアイズアルティメットドラゴンが３体のブルーアイズホワイトドラゴンに分離し、フィールドに現れる。
「詰めが甘かったな……行くぞ！！ブルーアイズホワイトドラゴンの一斉攻撃！滅びのバーストストリーム！！」
　３体のブルーアイズから放たれた攻撃が、カイザーのサイバードラゴンに襲い掛かる。
「強靭！無敵！最強！！」
　３体のサイバードラゴンが破壊され、大爆発が起きる。
「粉砕！玉砕！！大喝采！！！フハハハハハハハハウワーハハハハハハハ！！」
　そしてカイバーマンは勝利の雄叫びを上げた。
「クッ……」
　膝を突くカイザー。
「いいデュエルだった。しかし、まだまだ貴様はデュエル道の入口に入ったに過ぎん。これからも精進することだな」
「カイバーマン……」
「さらばだ。機会があれば、また会おう」
　カイバーマンは何処へと去って行く。
　そしてすぐに、十代たちは現実の世界へと引き戻された。

「凄いデュエルだったっすね」
　夜、オシリスレッドの寮で温泉でのデュエルを思い出していた翔が、何気に口を開く。
「お兄さんでも勝てないなんて、カイバーマンはバケモノっすよ」
「ああ、そうかもな」
　十代は天井を眺めながら、次こそは勝つのが自分だと心に誓うのであった。