な、なんてことだ……この俺がこんな不覚をとるとは……
　俺はそう思いながら天井を見つめた。
　視界がぼやけてはっきりしない。
　頭がぼーっとする。
　体がだるい。
　おまけに咳も止まらないときたもんだ。
「功司君、大丈夫？」
　マリィが心配そうな表情で、俺の顔を覗き込む。
　まったく情けない……
　マリィにこんな心配をかけちまうなんて。
「ああ、だいじょ……ゴホゴホッ！！」
「あっ、もぅ！ちゃんと寝てなくちゃダメよ」
　起きあがろうとする俺を、マリィが制止する。
　そして自分の左掌を俺の額へ。
　マリィの掌はひんやりしていてとても気持ちがよかった。
「まだ熱いなぁ。はいこれ、タオル濡らしてきたわよ」
　マリィは七分程度にしぼった濡れタオルを俺の額へとのせた。
「ありがと」
「どういたしまして。病人なんだから、あんまり無理しちゃダメよ」
　マリィは微笑むと、ベッドの側にあった椅子に腰掛けた。
「それにしても、ビックリしちゃった。休日はいつも早く起きる功司君がなかなか起きて来ないんだもん」
「悪かったな」
「こんなことになるなら一緒に寝ればよかった？」
「そのほうがよかったかも……気がついた時には窓が開いてたからな」
「こんな寒い季節に窓全開にして眠って、風邪引かないほうがおかしいわよ」
「仕方ないだろ。俺にだって覚えがないんだから」
「ホント、しょうがないなぁ」
　マリィはヤレヤレといった感じでため息をつく。
　まぁ、無理もないか。
　全ては自業自得なんだし。
　夢の中で窓を開けるような動作をしていたことはうっすらと覚えているのだが、どうやらそれを現実に実行していたらしい。
　朝気がついた時には窓が全開に開いてる状態で、布団をかけずに眠っていたようだった。
　おかげで風邪をひいちまったんだけどな。
　まったく、何が悲しくって休日にこんな目に合わなきゃイケナイんだ。
「なぁマリィ」
「なあに？」
「ゴメンな。折角久しぶりのデートだったってのに」
　マリィは俺の言葉に小さく首を横に振った。
「いいのよ。あたしは功司君が元気になってくれればそれで」
「マリィ……」
「デートなんていつでもできるんだしさ。今は功司君がよくなるほうが大切でしょ？」
「あ、ああ……そうだな」
「そうだよ」
　マリィはニッコリ微笑むと、とてもキレイな歌声で歌を歌い始めた。
　とても心が安らいでいくような気がする。
　そしていつしか、俺は深い眠りへと落ちていった。