「ほえ？」

　駅舎を出て、その建物をじっくりと眺めようと振り向いたシェラは、思わず素っ頓狂な声を上げた。

　そこには、東洋とはかけ離れた西洋風の建物が、威風堂々とした様子で建っているのだ。

　その駅舎はカナダ風のログハウスで、一本一本組まれた丸太が、随分と長い年季を感じさせる。

　そして、それを優しく彩るかのように桜が綺麗に咲き誇っている。

　駅前には今ではあまり見かけなくなった丸ポストまで設置されている。

　一言で言い表せば、とても不思議な感覚であった。

　西洋風でありながら、東洋風を感じさせる。

　浮いてるようで、周りに溶け込んでいるようにも思える。

「不思議なところだなぁ……」

　シェラは今まで感じたことのない感覚に、しばらく身をゆだねていた。

　懐かしいような、新発見のような、異国情緒があふれているような、優しさにあふれているような……

　複雑な感情が入り混じり、不思議な気分になる。

「まるで大草原の小さな家……じゃなくって、大きな村の小さな異人館みたい……」

　シェラはポツリと呟くと、クスッと笑った。

　駅舎というものには、やはりそれぞれ個性があってしかるべきであろう。

　何故なら駅舎というのは、その土地の者を送り出すため、または他の土地から来た者を受け入れるための窓口、出発点になるからである。

　特に勉学や勤労のため離れていた者が帰ってきた時、駅舎を目にして初めて『ああ、故郷に帰ってきたんだな』と実感するものだ。

「明覚駅、かぁ……」

　シェラは何故、この駅が関東の駅１００選に選出されたのかを、よく理解した。

「やっぱ来てよかった」

　シェラの心は、満足感と充実感で満たされるのであった。