シェラはバスに乗っていた。

　軽横間がなくなった今、バスによる代替が実施されているのだ。

「……湖さん、まだ続けるの？」

　当たり前だ。続きがあるんだから当然だろ？

「でも……往生際が悪いよ。ただの悪あがきにしか見えないよ」

　うるさい！うるさい！！うるさい！！！

　続けるったら続けるの！！

「もぅ……しょうがないなぁ……もうちょっと茶番劇に付き合ってあげるよ」

　な、なんだとぉ！？

「ボクって優しいなぁ。湖さんにいつも意地悪されてるのに」

　……へいへい。釜飯やるからゆっくりバスの旅を楽しんでくれ。

「はーい♪」

　どうだ？おいしいか？

「うん♪やっぱり旅には駅弁がつき物だよね♪電車の中じゃないって言うのが、ちょっと残念だけど」

　文句言うなよ。

「そうだよね……あっ、案内表示板がでてるよ」

　そうみたいだな。

「えーっと……横川まで２４キロ……２４ｋｍ！？」

　そうみたいだな。

「『そうみたいだな』じゃないよぉ！！ボクにそんな距離歩かせる気だったの！？」

　そういうことに……なるかな？

　以前タクシーの運ちゃんに尋ねてみたら５０００円はかかるって言われたから。

「う〜〜〜っ！！」

　わわわっ！！いきなりなぐりかかってくるな！！

「だって湖さんがいけないんだもん！！」

　わ、悪かった！！俺が悪かったから、やめてくれ！！

「反省してる！？」

　してるしてる！！じゅーぶんしてます！！

「……なら、許してあげる」

　まったく、乱暴なやつだな。

「湖さんがいけないんだもん」

　はいはい。

「あ、バスのアナウンスだ」

　ああ。碓氷峠の紹介をしてるんだ。

「そうなんだ？？なんだか最後の日を思い出すね」

　ああ……そうだな……

「これで後は横川につけばおしまいだね。やっぱり今回は楽なお仕事でよかった♪」