このお話は、筆者が最後の特急あさまに乗車したときの、直江津駅での体験を語ったものです。

　このお話の後、紀行文『特急あさまに捧ぐ』へと繋がっていきます。

　報告はいつものように、シェラにお願いしたいと思います。

「……………………」

　ん？どうしたんだシェラ？そんなおっかない顔して。

「……………………」

　なんだ？さっきから黙りこくったりして。

　お腹でも痛いのか？

「…………嘘つき」

　えっ？

「湖さんの嘘つき！！」

　な、なんだなんだ？

「フェレス報道実録記じゃあんなこと絶対やらないっていったじゃないか！！」

　アレはその、なんだ……

「鬼！！悪魔！！エロイヤン！！」

　ありがとう。最高のほめ言葉だよ。

「う〜〜〜っ！！ボクに百合をやらせるなんて酷いよ！！」

　いいじゃねえか別に。

　それにホラ、お前だって結構気持ち良さそうにしてたじゃねえか。

「ア、アレはその……と、とにかく、ボク、もう湖さんのこと信用できない！！」

　わがままなやつだなぁ。

「わがままじゃないもん！！信念はどこ行っちゃったの！？」

　ふっ……人間とは、心の移り変わりが激しい生き物なのさ。

　故に！！小生のやったことは愚行でも蛮行でもなく、必然的な成り行きだったといえよう。

「自分のやったこともっともらしく正当化しないでよ！！」

　だって……なぁ……

「湖さん！！」

　は、はい……

「大体湖さん失礼だよ！！そんな変なマスクかぶって人の話を聞くなんて！！ボクを馬鹿にしてるの！？」

　いやぁ、そんなつもりはないんだが……

「じゃあ脱いでよ」

　……却下。

「どうして！？」

　脱げないもんは脱げん。

「う〜〜〜〜っ！！」

（ポカポカポカポカポカポカ）

　……気がすんだか？

「全然すまないもん！！」

　わ、バ、バカ！！いきなり何するんだ！？

「スリーパーホールドだよっ！！」

　チョ、チョークチョーク！！

　ぐるじい……タップタップ！！

「マスク剥ぎ取ってあげるんだから！！」

　や、やめれ……

「やめないもん！！それっ！！」

　わっ！！

「わっ！？」

　だからやめろっていったのに……

「どうしたの湖さん！？その、お岩さんみたいな顔は！？」

　イリスに殴られた。

「えっ？」

　『何でアタシにあんなことさせるのよ！？』って烈火のごとく怒りまくってな。

　タコ殴りにされた。

「うわぁ……それで、マスクで隠してたの？」

　まぁ……こんな顔見せちまったらお前が怒れなくなるだろ？

「えっ……？」

　……………………

「湖さん……」

　どうしたんだ？もう気が済んだのか？

「ぜーんぜん気がすまないもん！！」

　だろうなぁ……

「クスッ」

　？

「いいよ、行ってあげる」

　えっ？

「やっぱり湖さんにはボクがついててあげないとダメだもんね」

　シェラ……

「そんな顔しないでよ。ただでさえ面白い顔がますます面白くなっちゃうよ」

　な、なんだと？

「イリスに殴られて少しは男前になったんじゃない？」

　へいへい……悪かったな。男前じゃなくってよ。

「すっごく悪いもん♪それじゃあ、いってきまーす♪」