新幹線は順調に、目的地に向け走っていた。

　大宮を出たあさまは、この後佐久平までノンストップで走る。

　高崎に止まらないことを考えるといささか驚くべきことではあったが、シェラは一刻も早くこの新幹線から降りたいと思っていたので、一刻も早く着いてくれないかなぁということだけを考えていた。

　そして新幹線は、順調に熊谷、高崎と通過していく。

「退屈だなぁ……」

　シェラは欠伸をしながら１号車のなかを眺めていた。

　ふと、誰かがこちらに向かって来るのが目に留まった。

　その人物は最後尾デッキにくると、人波を掻き分け、激しく運転室をノックする。

「すみませーん！すみませーん！！」

「なにやってるのロジャー？陽気のせいでおかしくなった？」

「ちがーう！！」

　シェラの言葉にロジャーは激昂したが、すぐに表情戻すとコホンと咳払いを一つした。

「急病人が出ちゃったんで。駅長さんこの中にいるよな？」

「車掌さんだったらさっき向こうの方に行っちゃったよ」

　シェラは１号車の先を指差す。

「あっ？そうなのか？」

　ロジャーはそれを確認すると、車掌の姿求めて２号車の方へといってしまった。

「急病人かぁ……」

　シェラはこの時、何故かワクワクせずにはいられなかった。