小諸に着いたシェラは、電車を乗り換えるべくホームの階段を上った。

　シェラの降りた１番線の電車は軽井沢へ、階段を上って少し歩き、階段を降りたところにある２番線は軽井沢方面、３番線は長野方面へ。

　また、２番線、３番線への階段を下りずに、さらに進んで階段を下りたところにある４番線、５番線は小淵沢方面へと向かう。

　小海はＪＲ小海線（小諸〜小淵沢間）のほぼ中間にあるため、４、５番線に行く必要があった。

　そして、階段を下りようとしたシェラは、足が止まった。

　壁に小海線の時刻表が貼られているのだが、次の列車の発車まで、あと１時間近くもあったのだ。

「ひーろーしーさーん！！」

　怒りのこみ上げてきたシェラはポケットから携帯電話を取り出すと、ピポパと番号を押した。

　トゥルルルル、トゥルルルルと数回呼び出し音がなった後、この事態を招いた張本人が出た。

『ふぁわ〜い。どちらさま？』

「『どちらさま』じゃないよぉ！！電車がないじゃない！！」

『へっ……ああ、そう言えば小海線はやたらと本数が少ないんだよ。言ってなかったっけか？』

「初耳！！どうしてそーゆー大事なこと、先に言ってくれないんだよぉ！！」

『ああ、悪い悪い。今度からは気をつけるよ』

「絶対気をつけてよね！？」

　平身低頭に謝る湖の声を聞きながら、シェラは電話を切った。

「まったくもう……湖さんって、ホントどこか抜けてるよね」

　シェラは溜息をつくと、もう一度時刻表を見た。

　行き先は『中込』となっている。目的地の小海は、さらにその先だ。

「中込で乗り換えかぁ……」

　シェラはとりあえずボーっとしながら電車を待つことにした。

　そして１時間近く後にようやくやってきた電車に乗って、小海を目指すのであった。