懐古園は渥美清記念館や島崎藤村記念館などの文化的美術的施設の他に、動物園や遊園地を備えた一種のテーマパークである。

　上田公園と違って入場料を取るが、広さや規模を考えれば、これは致し方のないところだろう。

　二人は早速入場料を払って、園内へと入った。

「とりあえず、これからどうするの？」

　そうだな、まずはぐるりと一周回ってみるか。

「うん」

　二人は木々の生い茂る公園の中をゆっくりと歩き始めた。

　清々しい風とともに木漏れ日が二人の頭上から降り注ぐ。

「広いねー。この公園。流石入場料とるだけのことはあるって感じ？」

　まぁ、そうだな。

「でももったいないよね。特急止まらなくなっちゃったおかげで、大分お客さんこなくなっちゃったんじゃない？」

　だろうな。

「だよねぇ……」

　シェラは神妙な面持ちで相槌を打つ。

　シェラの視線の先にはここしばらく開いた様子のない蕎麦屋があった。

　この公園の中に、そのような閉店した店がいくつもある。

「やっぱ特急止まらない影響って大きいんだね。これじゃあ折角の資源がもったいないよ」

　仕方ないさ。小諸は新幹線誘致合戦に負けた。それだけのことだ。

「でも、やっぱりもったいないよ……」

　二人は木漏れ日を浴びながらそんな寂しげな公園の中を散策した。