1.出発は軽やかに
目を覚まし、携帯を開くと、携帯の時刻は既に午前8時を過ぎていた。いつもの起床時刻。
しかし、いつもの憂鬱な気分はない。
何故なら、今日は有給をとったからである。
普通の出勤日にごろ寝が出来る――
こんなに幸せなことが、果たしてあるだろうか。
だが、今日はごろ寝をするために有給をとったわけではない。
ある場所に遠征するために、わざわざ有給をとったのだ。
「ルートはこういってこういって……こういくのか。……うん、とりあえずオッケー」
携帯サイトでルートを確認したシェラはむくりと起き上がると、大きくあくびをした。
「ちゃっちゃと身支度しちゃおっかな」
実は当初の予定では、午前6時に家を出ていたはずである。
それがこんな時間になってしまうとは……だが、時間的余裕はたっぷりあったため、シェラは慌てることはしなかった。
「ふわぁ〜……」
シェラはもう一度大きくあくびをした。
「……シャワーでも浴びてこよっと」
そしてシェラはシャワーを浴び、身支度を整え、家を出た。