タクシーは七尾駅に向けて軽快に飛ばしていた。

　っていうか、運ちゃん、駅はまだなの！？

「もうちょっとだよ」

　早く早く！！

「っていうか、湖さんこそ落ち着きなよ。駅は逃げたりしないんだからさ」

　これが落ち着いていられるか！！

　などなど、愉快なやり取りが続くこと数分。

　ついに目的地である七尾駅に到着した。

　タクシーの運ちゃんにお礼を言って、足早にタクシーを降りる。

「へぇ……ここが七尾駅かぁ」

　ああ、感無量だな。愛しのつばさちゃんと同じ空気が吸えて！

「よかったね」

　本当、この駅に来るためだけに社員旅行に来たようなもんだからな。よかったよかった。

　良かったついでに、長編の愛のポエムを語りたいところなんだが、あいにく、そんな時間ないからな。今回は断念だ。

　というわけで、行くぞ。

「行くって？何処へ？」

　和倉温泉駅。

「はい？？」

　なんだ？不満か？

「あのぉ……意味わかんないんですけど」

　じゃあ言い方を変えよう。

　コレは、どんなジャンルの話だ？

「紀行文」

　何の紀行文だ？

「鉄道」

　その鉄道、一回でも使ったか？

「そういえば……バスだけだね」

　というわけで、３分後にくる電車に乗って、和倉温泉駅に行くぞ。そしてホテルに戻って任務完了だ。

「ありえない！！姑息！！なにそれ！？」

　いいんだよ姑息だろうがなんだろうが！！

　あ、時間が！！ほら行くゾ！！

「あ、ちょ、ちょっと待ってよ！！」

　二人は大急ぎで改札を抜ける。そして程なくやってきた普通列車に乗って、和倉温泉駅へといったのであった。

　ちなみに車内は、田舎丸出しの高校生が入り口にたむろしていたので、半ば突破するような感じで強引に乗り込んで言ったという。

「って言うか、大人気ないよホント」