今年もこの季節がやってきた。

　年始の風物詩、京王百貨店で行われる駅弁大会。

　シェラはこの日のために、1週間前にシミュレーションを行う念の入れようで臨んでいた。

「シミュレーションじゃなくて、湖さんが期日間違えただけじゃん。1週間間違えて、誰もないところに並んで。プークスクス」

　……コホン。

「あ、ごめん。どうぞ続けて〜」

　……シェラは朝6時に起き、朝8時15分に新宿駅中地階エレベーター前に到着した。

　既にエレベーター前は人で一杯であったが、辛うじて3号機前に並ぶことができた。

「うえののあなごめし、毎年激戦だよねー。こんなに早く来ないと整理券とれないなんて……」

　やがて、いつもおなじみの朝礼が始まる。

「私、佐賀の駅弁買った時についてた器、使ってるんですよ。ほら、アレ」

『カレー！』

「いや、カレーじゃなくて、もう一つの方の」

『そっちかー』

　並んでる人たちと京王社員のおじさんの軽妙なやりとりが続く。

　やがて10時を迎えて、エレベーターが動き出す。

「最初が勝負！」

　7Fにつくや、申し合わせたようにみんなでダッシュ。

　そして総合案内所であなごめしの整理券を2枚ゲットした。

「ふぅ。最初の目的を果たせたかな。さて次は……」

　その足で、今度は佐賀牛ステーキ弁当を購入。そして天然とらふぐ握りを購入し、鱧弁当も購入。

「とりあえずこれくらいでいいかな」

　シェラは休憩所へ行くと、佐賀牛ステーキ弁当を開けた。

「今年のオープニング駅弁は、これで決まり！うーんジュースィー」

　満足そうに舌鼓を打つ。食べ終わると今度はとらふぐ握りへ。

「このピリピリ感。たまらないよねー」

　そして、あっという間に2つのお弁当を平らげた。