「うーん！気持ちいいー！」
目の前には大きな運河。
「日本にもこんなところがあったんだねー」
シェラは感嘆を覚えながら、改札を抜ける。
無人駅のため、スイカの簡易改札機が３つ置かれていた。
そのうちの１つにパスモをかざし、精算を行う。
「それにしても、この駅のどこが、秘境駅なんだろう？」
シェラはそんな呟きをしながら駅舎を出ようとする。
しかし、そこで足が止まった。
目の前にゲートが置かれており、そこから抜け出ることができない。
「……なにこれ？抜けられないじゃん」
シェラはため息をつくと、視線を別の方に向けた。
そちらは公園になっており、抜けることができる。
「じゃあちょっと公園に行くかな」
シェラは公園に入ると、そのまま遊歩道を歩いた。
運河には、気持ちよさそうに鳥が遊泳している。
「ほのぼのしてて、景色もいい公園だなぁ」
シェラはそんな呟きをしながら、先を歩く。しかし歩が止まった。
行き止まりになっており、これ以上先には進めない。
「……なにこれ……出られないじゃん……」
シェラは嫌な予感を覚える。
そう、この駅は東芝の私有地に存在しており、一般人は鉄道を使うことでしか到達できず、駅の外に出ることはできない駅なのであった！
「なにそれー！！」
さらにシェラに追い打ちをかける構内アナウンスが流れる。
「次の発車は12時です。なお、その次は14時となっておりますので、ご注意を」
「えええっ！？」
シェラは慌てて時計を見る。時刻は11時50分であった。
「聞いてないよー！！」
シェラはベンチに腰掛けると、慌てて鱧弁当を広げる。
そして運河を眺めながらかきこむように食べると、簡易改札にパスモをタッチし、そのまま電車に乗ったのであった。