ピピピッ、ピピピッ！
　カチャ
　俺は目覚まし時計に手を伸ばしてアラームを解除する。
　５時４０分。その時間は、明らかに俺がいつもセットしている時間よりも早い。
　……セットし間違えたのかな？
　早く起きてしまったことを後悔しつつ、ベッドの中で手を伸ばす。
　ぷにっ。
　指先に何かがあたった。
　なんだこれは？
　俺はさらにそれを触ってみる。
　ぷにぷにっ。
　柔らかく、心地よい感触。そして、それを触るたびに布団の中で何かがもぞもぞと動く。
　なんだなんだ？
　気になった俺は布団を一気にまくった。
　スースー
　見知った顔が俺の背中で、静かな寝息を立てている……フリをしている。
　頬を紅色に染めながらの、あからさまなタヌキ寝入りだ。
「おい……」
「……もぅご主人様ったらぁ……エイミーまだ心の準備が……」
「何を言ってるんだ何を！」
「だってご主人様、いきなりエイミーのおムネを触ってくるんですもの……」
「えっ！？」
　俺は慌てて右手を隠すように後ろに引っ込める。
　そうか、それであんなに気持ちよかったのか……
　わずかばかりの幸福感とそれ以上の罪悪感が俺の心を支配する。
「エイミー、ご主人様があんなに大胆だったなんて知りませんでした」
「なんでじゃい！」
「だってエイミーのおムネ……」
「そうじゃない！なんでお前がこんなところに寝てるんだ？」
「それは……昨日のカミナリが怖かったから……」
「それで、俺のベッドにもぐりこんだのか？」
「ご主人様と一緒なら、エイミー怖くないから……」
「あのなぁ……だからって、人の寝込みを襲うような真似をするんじゃない」
「ご、ごめんなさい……」
　はぁ〜……
　俺は深いため息をつく。
　昨夜は台風上陸に伴うものすごい暴風雨で、天が怒り狂ったかのように雷鳴が鳴り止まなかった。
　少なくともこの時点で気づくべきだった。
　こいつが俺の部屋にやってくるということを。
「ああ、わかったわかった。でも目覚ましのセットを勝手に変えるのは勘弁してくれよ」
「こ、今度からは気をつけます」
　エイミーはそう謝ったものの、まだ何か言いたそうな顔をしている。
「あ、あの、ご主人様……エイミー、お願いがあるんですけどぉ……」
「なんだ？」
「そ、その……腕枕、してください」
「……もう朝か……」
「あっ、ご主人様ぁ！！」
　何も聞えなかったフリをして俺はベッドから抜け出すと、カーテンをサーッと開けた。
　うっすらと赤く染まった朝日の陽光が飛びこんできた。