「綾人さん」
「なんだ？」
「腕、組んでもいいですかぁ？」
「……好きにしろ」
「それじゃあお言葉に甘えて……えへへ♪」
　エイミーは寄り添うように俺と腕を組んでくる。
　はぁ……今日は厄日だ……
　俺は頭痛を覚えながらも早くこの悪夢から逃れたい一心で頭がいっぱいだった。
　理由は言わなくてもわかると思うが、それ以外にもエイミーの服装にもあった。
　というのもエイミーの服装は白を基調としたドレスで、ウェディングドレスと見間違えるほど派手なものだ。
　まるで童話の世界に住むお姫様といった感じで、痛いほど周囲の視線を集めてしまっている。
　エイミーのやつ、俺に何か恨みでもあるのか？
　俺はあまり目立ちたくないのに、これではイヤと言うほど目立ってしまう。
　しかしだからといって帰ろうとすると、エイミーは泣き出すに決まっているのでそれだけはごめんだ。
　というわけで、ブティックを出た俺達は、街中をしばらく散策することにした。
　初夏の日差しが眩しい。
　俺の片手にはエイミーが買いこんだ服が入った紙袋を持たされている。
　これだけでも今日はかなり痛い出費だ。
「えへへっ」
「どうしたんだ？」
「だって綾人さんとこうしてデートできるなんて思わなかったから」
「俺もだ」
　とても幸せそうなエイミーを見て、俺もなんだか嬉しくなってしまう。
「まぁ、たまにはいいかな？こういうのも」
「？なにかいいましたかぁ？」
「うんにゃ。別に」
　俺はそう答えるとちょっと強くエイミーを引き寄せた。
「きゃっ！」
　エイミーは小さな悲鳴を上げ、驚いたように俺を見る。
「あ、あのぉ、綾人さん……？」
「天気もいいことだし、公園の林道にでもいこっか」
「はいっ！」
　エイミーは幸せいっぱいの笑顔を満面に浮かべながら嬉しそうに答えた。
　いつもこいつに迷惑かけてるもんな。いくらこいつが悪魔だからって、たまにはこれくらい、いいよな……
　俺は天を見上げながらそう思った。
　広い青空には雲ひとつなく、とても綺麗に澄みきっていた。