気がつくと時計の針は午後７時を指していた。
　外の景色は既に闇に包まれている。
「なにやってるんだエイミーのやつ……いくらなんでも遅すぎやしないか……」
　流石に気になった俺はシャープペンを机の上に投げ出して立ちあがると、下へと降りていった。
　足音がやけに大きく響き渡る。
　エイミーが騒がしすぎた影響もあってか、いないならいないでなんだか寂しい。
　……って、俺は何を考えてるんだ！
　エイミーは悪魔なんだぞ？
　ちょっと悪魔らしくないけど……一応は……
　不安を胸に抱えたまま俺はキッチンへといってみた。
　いつもならここでエイミーが料理をつくってくれている。
　しかし今日はそんな姿はない。
　代わりに料理が盛られたお皿がいくつか、テーブルの上に置かれていた。
「……あれ？」
　俺はこの光景に疑問を感じずにはいられなかった。
　帰って来た時はあんなのなかったはず……
　近寄ってみると、お皿の下に書置きらしきものが残されている。
「なんだこれは？」
　俺はその書置きを見ると、かわいらしい丸文字で次のようなことが書かれていた。
『ご主人様へ
　ちょっと私用ができたので出かけて来ます。
　今日は帰ってこないので
　お夕飯はお一人で食べてください。
　愛しのエイミーより』
「………………私用だぁ？」
　俺はこの一単語がやけにひっかかった。
　急いでエイミーの部屋へと急行するが、やはりエイミーの姿はない。
「……どうしたんだエイミーのやつ……うーん……」
　俺は再び一階に戻ろうとして、足を止めた。
　先ほどは気にならなかったのだが、気になるものを発見した。
　それは今日の新聞だった。
　エイミーが新聞を読むことは決して珍しいことではない。
　しかし、エイミーの部屋にある、ということが不自然過ぎるのだ。
　気になった俺は新聞を拾いあげて一面をみると『怪盗黒薔薇』と言う単語に赤ペンでマーカーがなされている。
「なに企んでるんだ……エイミーのやつ……」
　俺は、エイミーが何かを企んでいることを確信しつつ、エイミーが作ってくれた夕食を残さず平らげた。