ほのかに染まった薄桃色の花びらが、暖かな陽光をうけてふんわりと咲き乱れています。桜色に包まれた公園の中では、人々の笑い声や楽しい会話がやむことなく、いつまでも続くのでした。
　こんにちわ。水無川蜜柑です。
　桜の季節になりました。街全体が和やかな雰囲気に包まれていて、とても暖かいです。
　今日は休日ということもあって、みんなでお花見にいくことになりました。現地集合ということで、今からドキドキわくわくしています。
　はっちゃんとわかちゃんが先に行って場所を取ってくれるということなので、わたしも頑張ってお料理を作りました。
　サンドイッチをバスケットにいれて、準備は完了です。これでいつ晶君が迎えに来てくれても大丈夫です。
『ピンポーン』
　そう思っていたら、ちょうどいいタイミングで玄関のチャイムが鳴りました。
「はーい、どなたですか？」
　お母さんが玄関へと向かっていきます。
　ガラガラガラと玄関のドアが開く音がすると、話し声が聞えてきました。
「いつもいつもごめんなさいね。あの子鈍くさいところがあるから」
「いえ、そんなことないですよ」
「でも、晶君がいてくれると助かるわ。蜜柑のこと、よろしくね」
「えええ、え、っと、あの、あはは」
「お、お母さん！！」
　わたしは慌てて玄関へと行きました。
　そこではにこにこ笑っているお母さんと困ったような顔をしている晶君がいます。
「あら蜜柑。ダメじゃない、晶君待たせるようなことしちゃ」
「そ、そんなことじゃないです。わたしと晶君は、その、そんな関係じゃ！」
「あら？意外とお似合いよ。二人とも。なんだかお母さんとお父さんの学生時代を思い出すわ」
「そ、そんな……」
　お母さんはクスクス笑っています。
　わたしと晶君はそんな関係じゃないのに、なんだか晶君に迷惑をおかけしているようで心が痛みます。
「お、おい蜜柑。そろそろ行かないと」
　困ってるわたしを見て、晶君が助け舟を出してくれました。
「そ、そうですね。すぐに荷物をとってきます」
　わたしはそう言って台所に戻り、バスケットとお重をとってきました。
「それじゃあお母さん、行ってきますね」
「うふふ。行ってらっしゃい」
　お母さんは優しく微笑みながら、わたし達を見送ってくれました。