「あ、あの、先程はもうしわけございませんでした」
　家を出て少し歩いたところで、わたしは晶君に深々と頭を下げました。
「お母さんあんなこと言ってましたけど、ホントは優しくってとってもいい人なんです。ですから誤解しないでください」
「なんだ。そんなことならいいよ」
　晶君はあまり気にしていないようでした。
「で、でも、あんな誤解されてご迷惑をおかけしたんじゃ……」
「うん、確かにちょっと迷惑だったかもな」
　晶君は悪戯っぽく笑っています。
「ご、ごめんなさい！わたしが至らなかったばかりに」
「だから気にするなっていっただろ？それに……」
「それに？」
「いや、なんでもない」
　晶君はなにか言いたそうでしたが、言葉を止めると、視線をわたしの抱えている荷物に移しました。
「それにしても、その荷物……」
「これですか？少しはりきりすぎてしまいました♪」
　わたしはペロっと舌を少し出しました。
　バスケットのほかに、お重もあります。それも５つほど。
「はりきるのはいいけどよ……重くねえのか？」
「そんなことありません。わたしでもちゃんと持てるくらいの重さです」
「それにしても危なっかしいな……俺が持ってやるよ」
「え？そ、そんな。晶君にご迷惑をおかけするわけにはいきません」
「いいからいいから。こーゆー力仕事は男の仕事なんだから、遠慮なんかするなって」
「は、はい。ではお言葉に甘えさせて頂きます」
　わたしはお重の包みを晶君に渡して、バスケットは自分で持ちました。
「それじゃあ、行くぞ」
「は、はい」
　スタスタと歩き出した晶君の横を、わたしはついていきます。
　晶君はやっぱり優しいです。
　先ほどもそうでしたが、困ってるわたしをいつも助けてくれてくれます。
　晶君には感謝してもしきれないくらいです。
　でも……
『それに……』
　あの言葉の後、一体何を言おうとしたのでしょうか？
　とっても気になります。
　今度聞いてみることにしましょう。