「へぇ〜。昨日そんなことがあったんだ」
「目立たないけど、蜜柑らしい陰の活躍ね」
「そ、そんな。私はなにもしてないですよ」
　次の日、私は早速このことをはっちゃんとわかちゃんにお話しました。
　その結果、何故か私が褒められることになってしまったのです。
　私なにもしてないのですが……なんだかちょっと変な気分です。
「しっかし、蜜柑のオヤジさんよくやるよな」
「ホント、今の姿からはとても想像がつかないわね」
「私もビックリでした。お父さんにあんな過去があったんなんて」
「しっかしよ、それって誰かに似てると思わねえか？」
「そうね。もっとも中身は伴ってないようだけど」
「誰かって……誰ですか？」
　私は話の内容が全く見えなく、困惑してしまいます。
　一体何を言おうとしているのでしょうか？
　すると二人は黙って隣の席をじっと見ました。
　そこには晶君が座っています。
「な、なんだよ」
　突然話をふられた晶君も、わけのわからないといった困惑の表情を浮かべていました。
「はぁ、こいつもこれくらい大胆なことやってくれたらなぁ」
「そうすれば私達もミクロン単位で少しは安心できるんですけど」
「だからなに言ってるんだよ。さっぱりわかんねーよ」
　はぁ、っとため息をつくとはっちゃんはトンと、晶君の肩に手を乗せました。
「お前も蜜柑に『俺と駆け落ちしてくれ！』くらいなことは言えないのか？」
　カァ〜！！っと頬が熱くなっていきます。
「なななな、何を言うんだ急に！！」
「そそそ、そうですよ！私と晶君はそんな関係じゃありません！！」
　晶君と私は共に恥ずかしがりながらそれを否定しました。
　まったく、はっちゃんってば何を言い出すかと思えば……
　でもはっちゃんとわかちゃんは、私なんかお構いナシといった様子です。これもはっちゃんとわかちゃんの親切だと言うのは十分わかっているんですが……私にはちょっと、刺激的すぎます。
「はぁ、この色男がもう少し芯のシャキッとした男だったらいいんだけど」
「でも、蜜柑を泣かせるような真似をした人の末路は悲惨なものですから、それよりはまだいいですね」
　はっちゃんもわかちゃんも物騒なことを言っています。
　とっても恥ずかしいです。
　クラスの人達はまた「いつものことか」といった様子でさほど気にしていないようでした。
　相変わらずはっちゃん＆わかちゃんｖｓ晶君の言い争いは続いています。
　私は窓の外に広がる空を眺めました。
　青く澄んでいて、一点の曇りもありません。
　『天使の家出騒動』
　そんなタイトルが思い浮かびました。
　ひょっとして新聞用のネタに使えるかな？
　……でも、やっぱりやめておきましょう。
　こんなにいい話は、記事にするのはなんだかもったいないです。それに、うまくは言えないんですが、私が望んでいる記事とは違うような気がします。
　ですからこのことは私達の中でステキな思い出としてとっておこうと思います。
　今日ものどかで、とても楽しく平和な一日です。