「どうして……どうしてこんなことになってしまったんでしょう……」
　私は涙が止まりませんでした。
　病院の治療室、ベッドには冷たくなった仔犬さんが横たわっています。
「私のせいです……私がもう少し早く連れてこれれば……」
「お前のせいじゃないさ。あまり自分を責めるなよ」
　晶君が肩に手を回して慰めてくれますが、今はどんな言葉も虚しく聞えます。
「でも私、仔犬さんとの約束を守れませんでした……」
「蜜柑……」
「仔犬さんはあの冷たい雨の中、ずっとずっと飼い主さんを待ち続けていたんです。自分が捨てられたことも知らずに、戻ってくるはずのない飼い主さんを……」
「……そうだな」
「仔犬さん……どんな気持ちだったんでしょうか……『きっと自分のご主人様は必ず戻ってくる！』って信じ続けていたのでしょうか……だとしたら、あまりにも悲しすぎます！あんなにも、あんなにも弱々しく鳴き続けながら……」
「きっとそれでも、あの仔犬は幸せだったんだろよ」
「そんなの……そんなの悲しすぎます！」
「そんなことはないぜ？だってよ、最後に心優しいご主人様に拾われたんだから」
「晶君……」
「だからよ、お前もそんなに自分を責めるなよ。最後にあの仔犬に幸せを与えたのはお前なんだから」
「ひっく……ひっく……うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん！！」
　私は晶君の胸に顔を埋めるようにして泣きつづけました。
「蜜柑……」
　晶君はそっと私を抱きしめてくれます。
　外の雨も一段と激しさを増していました。