「はぁ……」
　湯船に浸かりながら、ましろは大きくため息をつく。
「どうしたのシロちゃん？」
　隣で瞳を閉じながらまったりしていた明乃が、ましろを見る。
「さては副長。五十六に寝込みを襲われた、とか？」
　シャワーで髪を洗いながら、芽依が思いついたことを口にする。
「うぃうぃ」
　その隣で、同じくシャワーを浴びながらコクコク頷く志摩。
「『五十六ぅ！おどれ、ワシの部屋にかちこむとはいい度胸じゃ！』『ち、違うんです！ボクは決してそんなつもりじゃ……！』『黙らんかい！今すぐ引導渡したるわ！！』『や、やめてぇ〜！！』」
　体中に泡をつけた状態で、突然寸劇を始める幸子。
　ここ陽炎型航洋艦晴風の浴室は、いつにもまして賑やかな状態になっていた。
　しかし、そんな中で一人浮かない表情のましろは、「そんなわけないだろ」と素っ気なく答えると、再度大きくため息をついた。
「？」
　４人は互いに顔を見合わせる。
「どうしたのシロちゃん？さっきから変だよ？」
　明乃が心配そうな表情を浮かべながらましろに尋ねる。
「……実は……ミーナさんのことで……」
「ミーちゃんのこと？」
「はい……実は……主計課の連中が、ミーナさんが食べそうなお菓子を作ったから試食をして欲しいと、いろいろ持ってきて……」
「それで副長、いろいろ食べてしまったと？」
「ああ……」
　幸子の言葉にましろは頷く。
「大変だったんだね、シロちゃん」
　明乃は同情した。
「艦長、大変なのは副長のお腹かもよ？それだけカロリー摂取すればすぐにポヨンポヨンに……」
「なっ！！」
　芽依の言葉にましろは慌てて自分のお腹を触る。
「あはは！冗談。冗談だってば副長」
　ましろの仕草があまりにもおもしろかったのか、芽依は笑い出す。
「もぅ……わたしはあがるぞ」
　ましろは拗ねたようにそっぽを向くと、立ち上がった。
　そして浴槽から出ると、そのまま浴室を出て行く。
「あー……酷い目に遭った……」
　ましろは大きくため息をつく。
　ふと、床に体重計が置かれているのを発見した。
「ははは……まさかな……」
　ましろは恐る恐る体重計の上にのる。
「…………！！」
　そして表示された数値を見て、そのまま硬直した。
「あれぇ？シロちゃんどうしたの？」
　浴室から出てきた明乃が、ましろに近寄る。
「あー……これはこれは。副長、ご愁傷様」
　その後をついてきた芽依が、ましろの肩にポンと手を置く。
「み、見るなぁ〜！！」
　ましろは体重計から降りると、その場にかがみ込んだ。
「ああ……ついてない……」
　そんな頭を抱えるましろを見て、明乃と芽依は苦笑するのであった。