阿知賀女子麻雀部の人達と麻雀特訓を終えて１時間後。
　わたしと駿河さんは次の特訓相手を待っていた。
「次はどんな人達が来るんだろうね！　宗谷さん！」
　先程惨敗したというのに、駿河さんはもう気持ちを切り替えたのか、次に来る人達を心待ちにしている。
「ああ、そうだな……」
　対して私は重い気持ちで返事をする。
　あえて言おう。先程の麻雀は、麻雀でなかったと。
　なんて言うか、麻雀ではなく異能バトル？
　麻雀に関してはド素人の初心者な私ではあるが、それだけはわかる。
　今度来る人達はまともな人達だといいんだが。
「遊びに来ましてよ！」
　そんなことを考えていると、挨拶と共に５人の女子が入ってくる。
「岬さんの紹介で長野からやってきました。龍門渕高校麻雀部ですわ！　私は部長の龍門渕透華。本日はお相手して差し上げますわ」
　と、金髪に白い制服を着た高飛車っぽい少女。
「オレは、井上純。よろしく」
　と、ボーイッシュな背の高い少女。
「ボクは国広一。よろしく」
　と、頭にリボンを着けた、両手に手錠を着けた少女。随分奇抜なファッションだなおい！？
「沢村智紀。よろしくお願いします」
　と、紫系統の制服を着た、眼鏡をかけた物静かそうな少女。
「衣は天江衣なのだ！　今日はいっぱい遊ぶぞ！」
　と、バニーのようなうさ耳を着けた、白い制服姿の背の低い少女。鏑木さんみたいに小さいけど、飛び級とかじゃないよな？
　これはまた随分と濃いメンバーが来たなぁ……
　というか、着ている制服が明らかにお嬢様学校じゃないか！？
　艦長、どんな人脈を駆使してるんだ一体……
　と、それはさておき。
「わたしは横須賀女子海洋学校砲雷科１年、晴風クラスの宗谷ましろだ」
「わたしは横須賀女子海洋学校機関科１年、晴風クラスの駿河留奈だよ」
「「今日はよろしくお願いします」」
　わたしと駿河さんは、頭を下げて挨拶を返す。
　彼女達が岬さんの、いや航海科からの刺客、もとい麻雀の練習相手というわけだ。
「お二人とも、岬さんからはとことん鍛えてと言われてますから、覚悟なさってよ？」
　龍門渕さんの目が怪しく光る。
「それは、１卓を使って対局するのか？」
「その心配には及ばなくてよ。ハギヨシ」
「はい、お嬢様」
　どこからともなく、燕尾服を着た執事っぽい男性が現れる。
「これで２卓使えますわね？」
　そう言って微笑む龍門渕さん。
　あ、これダメなパターンのやつだ。
　わたしはこれから襲い来る惨劇に、思わず目眩を覚えた。



　そして約３時間経過後……
　わたしと駿河さんは、麻雀卓に突っ伏していた。
　っていうか、なんなんだこの人たち！？
　前の阿知賀女子より酷いぞ！？
「わーい。また衣の勝ちだー」
　一人喜ぶ天江さん。
　駿河さんなんか白目むいてるよ。
　もう何が異常かって。天江さんと対戦した時には必ず配牌が悪くなって絶対に上がれない上に、必ず海底撈月で上がられるんだ！　なんだこれ！？　どんなイカサマだ！
「わーん！　全然上がれないよー！！」
　あ、駿河さん復活した。
「まぁ、仕方ありませんわね。衣がここまで本気を出すこと自体珍しいですけど」
　龍門渕さんは慰めにもならない言葉をかけてくれる。
「やっぱり、天江さんは長野で一番強いんですか？」
「それは違うぞ。清澄の嶺上使いの方が衣よりも上だぞ」
　私の質問に、天江さんは謎のワードを持ち出してくる。
「何それ！　かっこいい……！」
　そのワードに激しく反応する駿河さん。
「あー、あいつかー」
「確かに、えげつないよねー」
「あれは異常……」
　天江さんの言葉に、井上さん、国広さん、沢村さんが首を縦に振る。
「清澄の嶺上使いとは？」
「清澄高校に、カンをすると必ず嶺上開花であがる人がいますの。おかげで私達、全国切符を逃しましたのよ！」
　私の質問に、龍門渕さんは遠い目をして体を震わせる。
　しかし、そうか……そんな異能者もいるんだな……
　私が横を見ると、駿河さんが何故か瞳を輝かせていた。
　そして、航海科からの紹介メンバーとの麻雀特訓は、なんとか終わったのであった。