「プレゼント？」
　そのエリスの言葉に、かりんは怪訝そうな表情を浮かべた。
　今までの例から言って、エリスのプレゼントと言えばロクでもないプレゼントであることは明白である。
　ある時は自爆装置が組み込まれたランスだったり、またある時は勝手に生地が溶けていく水着だったり、またまたある時は同性のことが好きになる惚れ薬だったり。
　例え違っていたとしても、１００％の確率で、トラブルに巻き込まれている。
　しかし、だからと言って、間接的にしろ直接的にしろ、その全部が全部、牧村功司と言う一人の人間に繋がっていたため、かりんとしても無碍に断るわけにはいかなかった。
　言わば、扱いに非常に困るプレゼントだったのである。
「そんなに身構えなくても大丈夫だゾ」
　しかしエリスはそんなかりんの心を知ってか知らずしてか、任せろと言わんばかりに胸を張る。
「今回のプレゼントはかりん、オマエに足りないものを補うものだゾ」
「足りないもの？」
「ソウ。オマエに足りないもの……ズバリ、料理の腕だゾ！」
　エリスはビシッとかりんを指差す。
「…………」
　３秒間、沈黙の風が流れた。
「……アー、ツマリ」
　エリスはコホンと軽く咳払いをする。
「例えば唯芽、沙夜、かりんの３人が同じ料理を作ったとする。そしてソノ完成品をテーブルに並べたとき、アイツがオマエの料理を取るって、断言デキるか？」
「うっ……」
「大体、オマエは騎士ダロ？騎士は主人に忠誠を尽くすモノダロ？それなのに料理のヒトツも満足に作れなくてドースル？主人の世話とかできるのか？」
「うううっ……」
　まったく正論ではないことを正論のようにまくし立てるエリスの言葉に、かりんは自己嫌悪に陥る。
　料理……それはかりんにとって、もっとも苦手な分野のひとつであった。
「心配スルナ。せめて唯芽程度に料理の腕が上がるよう、ちゃんと特別講師を招待したから。かりん、オマエにはコレから料理の修行をして貰う」
　エリスは一人ウンウン頷く。
　かりんにとって見れば、今回もありがた迷惑なことこの上ない、エリスのおしつけプレゼントで確定であった。
「はぁ……」
　かりんは大きくため息をついた後、エリスに尋ねた。
「ちなみに聞くけど、特別講師って誰？」
「ユメだゾ」
「唯芽ちゃん？」
「そっ。ユメちゃん」
「唯芽ちゃんかぁ……」
　かりんはその名前を聞いて、心の中でホッとため息をつく。別に人見知りをするわけではないが、やはり料理を教えてもらう以上、気心の知れた人の方がいい。
「オッ。噂をすれば」
　エリスの言葉にかりんは後ろを振り向いた。
　重々しい音を立てながら扉が開かれ、人が入ってくる姿が見えた。