「えっ……？」
　その店の中に入ってきた人物を目の当たりにし、かりんは目を丸くした。
　てっきり唯芽が来たかと思ったのだが、その人物は唯芽とは似ても似つかぬ風貌をしていた。
　頭のてっぺんにある二つの角はどこにもなく、代わりに山菜のゼンマイのようなクセ毛が３本、宙に向かって伸びてクルンとなっている。制服は聖遼学園中等部のものではなく、白のブラウスに青色のベストで、赤いネクタイを締めており、スカートをはいている。顔形は唯芽より大人っぽいが、どこかあどけなく、親しみを覚えるような柔らかさを持っていた。
「オー。ヨク来たな。今日は宜しく頼むゾ」
　エリスが声をかけると、その少女はかりん達の前まで緊張した足取りでやってきた。そして緊張した表情で自己紹介をはじめた。
「初めまして。わたす、魔法遣いの菊地ユメって言います。今日は宜しくお願いします」
　東北訛りの言葉で自己紹介を終えると、大きく一礼をする。
「し、神瞳かりんといいます。よ、宜しくお願いします」
　かりんもつられて自己紹介をし、大きく一礼をする。しかしすぐさまエリスの方を向くと、困惑した表情で話し掛けた。
「……コレって……いいの？」
「ナニが？」
「だって……この人、この世界には存在しない人じゃ……」
「細かいコトは気にスルナ」
　エリスは問題なしとばかりに胸を張る。
「古くは『アルセーヌ・ルパンＶＳシャーロック・ホームズ』『ゲッターロボＶＳマジンガーＺ』、最近だって『カーレンジャーＶＳオーレンジャー』、『スレイヤーズＶＳ魔術師オーフェンはぐれ旅』、『浅見光彦ＶＳ信濃の刑事コロンボ』、『牟田刑事官ＶＳ終着駅の牛尾刑事』ってな感じで、カップリングするのがトレンドなんだゾ」
　エリスは流行の最先端を言ってると言わんばかりにチッチッチッと人差し指を左右に振る。
（いいのかなぁ……）
　かりんは釈然としない気持ちながらも、流れに身を任せることにした。