「もぅ！！本当に功司君ってば、マリィさんには甘いんだから！！」
「駄目じゃない！！ちゃんとマリィさんの首に縄付けとかなくちゃ！！功司君保護者なんでしょ！？」
「功司君！！私も精神的苦痛を受けたから、ちゃんと埋め合わせしてもらいますからね！！」
　などなど、瑞希からきつーいお叱りを受けた俺は、隣にマリィが引っ付いてることもあって、精神的にぐったりとなっていた。
　まぁ、悪気があろうとなかろうと、マリィには後できつーいお仕置きでもしておくわけだが。
「それにしても、お腹空いたわね」
　瑞希のお説教が終わり、ババ抜きを興じていた俺達は、瑞希の一声で時刻が正午を過ぎていることに気がついた。
「それじゃあ、あたしが何か作ってくるよ。罪滅ぼしも兼ねて」
　マリィは立ち上がると足早にキッチンへ向かった。
　そしてエプロンを装着し、ひょっこり顔を覗かせる。
「唯芽ちゃんは何食べたい？」
「わ、私はひやむぎで」
　まだ落ち着かないのか、唯芽はおどおどした、恐縮しきった様子で答える。
　マリィはにっこりと微笑むと、次に静乃を見た。
「それじゃあ静乃ちゃんは？」
「焼鳥」
　静乃のそっけない即答に、マリィの笑顔が引きつる。
　ひょっとして第二ラウンド開始か！？
　そんな不穏な空気の流れる中、瑞希が静乃の肩にポンと手を置いた。
「駄目よ矢城さん。いつまでも引きずってちゃ。いい加減、水に流しましょう」
「瑞希先輩……はい……」
　静乃は不服そうにしながらも、瑞希の言葉にコクンと頷く。
　瑞希もたまにはいいことしてくれるな。
　俺はそんな瑞希の大人の行動に対して、感動を覚えていた。
「ありがとう。それで、春日さんは何にする？」
「照り焼きチキンで」
　自分の行動を許してもらえたと思ってニコニコしていたマリィの表情が、再び引きつる。
　どうやら遺恨と言うものは早々簡単に消えるものではないらしい。
「わかったわよ！！ひやむぎにする！！」
　マリィはきつい視線を瑞希と静乃に投げかけたが、二人は飄々とした様子でそれを受け流してしまった。
「具は鶏肉の細切りで」
「えーっ？から揚げの方がいいですよ」
「鶏肉なんて具に使いませんよーだ！！」
「どうして？好き嫌いはよくないと思うけど？」
「そうですよ？いけないことしたら罰を受けるのって、当たり前じゃないですか」
「あたしいけないことなんかしてないもん！！」
　そして再び三人のいい争いが始まる。
「ど、どうしましょう牧村さん！！」
　唯芽は怯えるように俺のそばへとやってきた。
　どうしましょうって、俺に言われても困るんだが。
　何か対処法が合ったら、とっくにやってるし……
「功司君は私の！！」
「私のお兄様！！」
「いいえ！あたしのよ！！」
　いつの間にか、論戦が俺の所有権に移ってるし……
「あなたたち、飽きないわねぇ」
　ビニールプールの水に浸かりながら、シーナが大きく溜息をつく。
「私！！」
「私です！！」
「あたしよ！！」
　そして３人の飽くなきバトルは、シーナと唯芽がアッチの世界へ返ってから１週間ほどしても、おさまる気配を見せることはなかった。