「あー、めんどくせー」
　俺はシャープペンを机に投げだし、そのまま椅子によりかかる。
　そして同時に睡魔が襲いかかってくる。
　このままベッドにもぐりこんでしまおうか……
　そんな気分にさえ襲われる。
　しかし状況が、それを許してくれない。
　というのも明日、抜き打ちテストがあるのだ。
　瑞希の情報だから、まず間違いない。
　しかも赤点を取れば恐怖の補習が待っているらしい。
　故にここで赤点なんぞを採るわけにはいかんのだ。
「ふぅー……頑張るか……」
　俺は再びノートにむきあうと、シャープペンを手に取る。
　……………………
　……………………
　……………………
「だめだー！！さっぱりやる気がおきねー！！」
　そして再びシャープペンを机の上に投げ出し、椅子によりかかる。
　我ながらここまで勉強嫌いだったとは……
　宙を見上げながら苦笑する。
　やっぱあの時、沙夜と一緒に勉強するっていっておけばよかったかな……
　思わず沙夜の笑顔が思い浮かぶ。
　あれは……そう、夕食の時だったな。
　俺のことを心配した沙夜が「功司君、一緒に勉強する？」と親切に言ってくれたのだが、俺は「心配するなよ。勉強くらい一人で出来るさ」と、その申し出を断わってしまったのだ。
　あの時は沙夜に迷惑がかかるといけないと思ってそう言ったんだが、今にして思えば二人で一緒にやった方がはかどったような気がする。
　かといって今から「やっぱり一緒にやろう」っていうのも、なんか気恥ずかしいし……
　あの時の沙夜の心配そうな表情、きっと俺がこうなるってこと見越してのものだったんだな……
　はぁ……
　コンコン
「功司君、ちょっといいかな？」
　ドアをノックする音と共に沙夜の声が。
　まさに天の助けってやつか？
「別に構わないぞ」
「それじゃあ、入るね」
　ドアが開かれ、沙夜が入ってくる。
「どうしたんだ、沙夜……？」
　椅子を回転させて沙夜を見た俺は、そのまま言葉が続かなくなる。
「えへへ……似合うかな？」
　恥ずかしそうに笑う沙夜。
「う、うん、似合うけど……じゃなくって、なんでそんな格好してるんだ？白衣なんかきたりして」
「功司君調子悪いんじゃないかなぁって、ちょっと様子見にきたんだよ」
「沙夜……」
「その様子だと、やっぱり調子悪いみたいだね。大丈夫？」
「全然大丈夫じゃない。かなり重症だ」
　俺は苦笑しながらそう答える。
　どうやら結果的に、沙夜に凄く心配をかけていたみたいだ。
「ゴメンな、沙夜。心配かけさせちまったようで」
「ううん、いいの。あたしが勝手に心配してただけだから」
　沙夜はニッコリと笑う。
「重症なら、あたしが見てあげるよ」
「えっ？」
「功司君と二人で、夜のお勉強」
　沙夜は恥ずかしそうにうつむく。
「だって、夜はこれからだし……それに……」
「それに……？」
「あたしと功司君は、一心同体だから……」