「ちょっと早いが、それじゃあ今日はここまで。まだ昼休みじゃないんだから、教室から出たりしちゃ駄目だぞ」
　教師はそれだけ言い残すと、足早に出て行く。
　４時限目の授業終了……それは即ち、昼休みに突入することを意味する。
　つまり、４時限目の授業が早めに終わるということは、購買や学食に食を求めに行く奴らにとっては、大変有利になるということだ。
「よぉ。貴明。昼飯どうする？」
　早速雄二が俺の席へとやってきた。
「わりぃ。ちょっと先約があるから」
　俺は即座に雄二の誘いを断る。
　優季との約束があるのに、雄二となんか一緒に学食にいけるか。
「そっか……」
　すると雄二は何故かため息をついて、俺の肩にポンと手を乗せた。
「お前も大変だなぁ。あんな奇妙な部活に引き込まれたおかげで怪しげな青春ライフを送らなくちゃいけないなんて」
「はぁ？」
「でもまぁ、お前と笹森さん、結構お似合いだからいいかもな」
「…………」
　雄二の奴、一体何言ってやがるんだ？
　ひょっとして、この前笹森さんにたまごサンドを横取りされた場面を目撃されていたとか？
　ありうる……それで勘違いしてるんだ。
　俺にはれっきとした『草壁優季』という『彼女』がいるというのに。
　……まぁ、説明するのもめんどいし、っていうか説明してて学食の席が確保できなかったらそれこそ本末転倒だし、今日はこのままそっとしておこう。説明するのはまたの機会ってことで。
　……っと、そろそろチャイムがなるころだな。
「じゃあな」
「おぅ、頑張れよ」
　雄二の変な励ましを受けつつ、俺はフライング気味に教室を飛び出した。