赤く色付きはじめた紅葉のトンネルの中を、電車は静かに走り続けた。

「もう、こんな季節なんだ……」

　窓辺に流れる景色を見ながらシェラはふぅ、っとため息をついた。

　早いものだ。信越本線碓氷峠区間が廃線になり、特急あさま及び白山が消滅してからかれこれ１年が経とうとしている。

　彼女は今、高崎駅から各駅停車の電車に乗り換えて信越本線上を走っていた。

　目指すはそう、通過駅から終着駅となった横川駅である。

　シェラは一周忌とも言うべきこの思い出の日に、どうしても現地に駆けつけずにはいられなかったのである。もちろん、仕事をサボって。とは言っても、杠葉湖の命令を受けていたのでだれからも怒られることはなかったのだが。

「間抜けな湖さんだよね。大学に残って補講受けなくちゃいけないなんて」

　シェラはクスッと笑いながら、食べ終わったダルマ弁当に蓋をかぶせた。そして自分のバッグの中へとしまいこむ。

　このダルマ弁当というのは食べ終わった後貯金箱に変身するから便利なものである。

　やがて電車は徐々にスピードを落としていった。

　そう、目的地が近づいてきたのだ。

　終着駅への到着を間近に告げる車内アナウンスが流れる。

「そろそろかな？」

　シェラはせっせと下車する準備を始めた。