「うわぁ……」

　ホームに降り立ったシェラは、１年前とは明らかに違う違和感を感じていた。

　そう、あの時ホームを埋め尽くしていた野次馬達がいないのである。

　当たり前と言えば当たり前の話だが、あの光景が目に焼き付いているシェラにはなんとなく寂しいような感じがした。

　そう、まるで完全に燃え尽きてしまったボクサーのような、『活き』と言うものがまったく感じられなかったのだ。

　本来のどかな自然に囲まれたこの地にはこのような光景があっているのかも知れない。が、少なくとも碓氷峠越えのために数分間停車してる間にお弁当を売り歩くといったスタイルを長年にかけて確立してきたこの駅にとっては、あまりふさわしいものではなかった。

「なんだか寂しいな……」

　シェラは心にポッカリ開いた隙間を感じながら駅舎を出た。

　と、そこで再びシェラは思いがけないものを目撃した。

　そう。万国旗である。

　それも並大抵の数ではない。

　駅舎を中心に、蜘蛛の巣のように張り巡らされてるではないか。

　まるで運動会の風景を思い浮かべてしまう。

「なにこれ……」

　シェラは呆気に取られてしまった。

　彼女の知ってる横川駅とは、まるで違う。

　駅舎の横では小さな露店がでており、かき氷やらお土産やらを売っていた。

　とりあえずシェラは、そこでなにか食べ物を買い求めることにした。