「ふわぁ〜……疲れた」

　北陸新幹線あさまから下車したシェラは首を二度、三度軽く左右にふると、大きく深呼吸をした。

　ここは汚れきった都会の空気とは違って新鮮な空気に満ち溢れており、なんとも清々しい。

　耳をすませると蝉のにぎやかなコーラスが風にのって聞えてくる。

　新幹線の駅というからもっと騒々しいところかと想像していたシェラは、安堵感を覚えると共に奇妙な感覚に捕らわれた。

　誰もいない無人のホーム。

　電光掲示板は次の新幹線が停車するのは２時間後と言うことを表示している。

「なんでこんなの造ったんだろ……」

　シェラの頭の中には素朴な疑問が浮かんでいた。

　ホームにはあさまの乗車口の他に、何故か通るはずのないＭＡＸ車輌の乗車口までご丁寧に書かれている。

「やっぱり変なの」

　シェラは極自然にそう思った。

　流石、全国変な駅ベスト１０に入賞するだけのことはある。

　ここ安中榛名駅は、それほど『新幹線の駅』と言うには程遠い独特の雰囲気をもっていたのだ。

　現に、この駅でシェラ以外に下車した乗客は誰もいなかった。

「とりあえず、改札でなくっちゃ」

　シェラは手荷物を持ちなおすと、改札への階段を降りていった。