「もう、遅いわよ」

　改札を出ると、待ちくたびれたかのように一人の女性が声をかけてきた。

「れ、レイア？どうしたの？」

「どうしたもなにも、私も命令されたのよ。あなたと一緒に行くようにって」

「え？じゃ、じゃあ同行者ってひょっとして……」

「そっ、わたしよ。よろしくね」

　レイアは苦笑する。

「一応わたしは主人公なわけだし、この辺で登場して目立っておかないとね」

「ふーん……主人公っていうのも大変なんだね」

「そうよ。それじゃあ行きましょ」

「あっ、ちょっと待ってよ」

　シェラはレイアの後について行くように駅舎を出た。

「……なにこれ！？」

　そして、目の当たりにした光景を見て、素っ頓狂な声をだした。

　それは、なにもない光景だった。

　青々と生い茂った木々や美しい色を咲かせた花など緑豊かな自然には囲まれている。が、人工的な建造物はこの駅舎以外には見当たらない。

「驚いた？」

「驚いたもなにも……なんでこんな山の中に建ってるの？」

「他に建設する場所がなかったんじゃないの？まぁ、実際は群馬県側のごり押しで急遽建設された駅らしいけど」

「ふわぁ〜……ボク、こんな変な駅初めてだよ」

　シェラは思わず目を丸くする。

　まるでクマが出没しそうな場所に駅舎が建っているのだ。

　こんな所に無理をしてでも建設した人間たちの気が知れなかった。

「ね、どうせだから安中駅まで歩いてみようよ」

「安中駅まで！？本気なの！？」

「だって、実体験してみないと、どの程度不便なのかわからないよ」

「それもそうね……でも……」

「大丈夫だよ。せいぜい、１、２キロくらいだと思うから」

「うーん……そうよね。そうしましょっか」

「うん♪」

　二人は頷きあうと、行き方もわからない安中駅目指して歩き始めた。