駅舎を出ると、一面に青空が広がっていた。

「うわぁ、いい天気だなぁ」

　シェラは眩しいほどに青く染まった空を眺めた。

　気分がなんだか清々しくなってくる。

　そして、振りかえって、今でてきたばかりの駅舎を見た。

　もうすぐ北陸新幹線が開通することに伴い、やぐらの形をした駅舎も全面改修され、その姿を消してしまう。

「こんな個性的な駅舎ならずっと残しておけばいいのになぁ……」

　シェラはそう思ったが、大人の事情というものを納得するしかなかった。

「高校で部活がなければ湖さんもこれたのに。ま、高校生だからしょうがないか。自由教育とは名ばかりの義務教育だからサボったりするわけにはいかないもんね」

　シェラは湖の悔しがる顔が目に浮かぶようで、自然と笑いがこみ上げてきた。

「まぁ、この駅舎が存在しているうちにもう一度は見に来てほしいかな？年に一度の善光寺参りだけじゃもったいないもんね」

　善光寺は長野駅から徒歩１０分ほどで行ける全国的に有名なお寺で、一説には別所温泉にある北向き観音とセットで御参りしなければ願いが叶わないと語り継がれている。ちなみに善光寺前で売られているミソソフトクリームは全国珍味ベスト３にはいる珍品だと、シェラは信じている。

　しかし今日は、シェラは善光寺参りに来たわけではなかった。

「とりあえず時間は……うわぁ、あと１時間もあるよ」

　バスの時刻表を確認したシェラは、頭を抱えこんでしまった。

　１時間ずっとベンチに座ってるわけにもいかない。

「本屋にでも行ってこよっと」

　シェラは早速、本屋へいくことにした。