しばらく通りを歩くと、運よく大きな本屋を発見した。

　それは平安堂であった。

「ラッキー♪」

　平安堂は上田にもあるため、どのような品揃えがなされているのか、おおよその検討がついている。

　シェラは運がいいと思いながらその本屋へと入っていった。

　しかし次の瞬間、目を丸くした。

　店内がとても広いのだ。

　品揃えも上田とは比べ物にならないほどいい。

「ここ……本当に平安堂だよね？」

　思わず一旦店外へ出て店の名前を確認しようと思わずにはいられなかったシェラであったが、気を取り直すと店内の人ごみをかきわけて推理小説コーナーへと向かった。

　最近シェラは推理小説にこっている。特に和久峻三著の『赤かぶ検事シリーズ』は、もはや旅の友として欠かさず携帯するようになっていた。

　今日も持ってきてはいたが既に行きの鈍行の中で読んできたため、新しく購入しようと考えたのだ。

「今日は……これでいっかな？」

　シェラは目的の本を手に取ると、そのままレジへ持っていき、購入し終わると店を出たのだった。