改札を抜けたシェラは、待合室を兼ねた駅舎の中央よりに置かれているスタンプ台にふと目が止まった。

　このスタンプ台というのは、関東地方にある駅でよく見かけるもので『関東名駅１００選』と銘打って、スタンプラリーもどきのことをやっているものだ。

「この駅も１００選に入ってたんだ……」

　シェラは意外そうな眼差しでキョロキョロと辺りを見回した。

　言われてみれば、確かにそんな風格が漂うような気がしないでもない。

「それじゃ早速♪」

　シェラはバックの中からスケジュール帳を取り出した。

　そしてパラパラとめくり、なにも書込まれいないページを見つける。

「やっぱコレクターとしては記念に押しとかなくっちゃね」

　シェラはインクをたっぷりとつけると、ゆっくりと、それでいて力強くスケジュール帳にスタンプをぺったんと押した。

　しばらくの間そのまま押さえつけておき、慎重にスタンプを、持ち上げる。

　無事、スタンプはキレイな形でメモ帳に押されていた。

「よかったよかった……」

　シェラは満足そうに頷き、スタンプを元あった場所へと戻す。

　そして大事そうにスケジュール帳をしまいこむ。

　ふと、シェラは先程スタンプを押した時のことを思い出した。

　何気に自分の胸に視線を落とす。

「いつかはボクも胸がおっきくなってみせるんだから。これ以上湖さんにボクのこと『ぺったん娘』なんて呼ばせないもん！！」

　シェラはグッと拳を握り締め、決意を新たに固く誓うのであった。