シェラは線路に沿って歩いていた。

　緩やかな坂道を、一歩一歩踏みしめながら山へと向かっていく。

　車の通行もあまりなければ、人の姿もない。

　それもそのはず。

　車はというと、ほとんどが高速自動車道か碓氷バイパスを通っていくのが常で、旧道を通っていく変わり者などほとんどいない。

　人にいたっては、歩いて超えるなど、よっぽど思い入れのある人か、ただの変人だろう。

　シェラの場合は前者であったのだが。

　前回のこともあり、今回はジョギングシューズを履いてきている。

　峠越えの装備もばっちりだ。

「あー、ワクワクする」

　シェラは独り言を楽しそうに呟きながら歩き続けた。

　ふと、シェラの前に標識が立ちふさがった。

「あれ？」

　シェラは歩を止め、その看板を見る。

　それは『通行止』を示す標識であった。

「あっ♪」

　シェラの表情が暗く沈んでいく。

「通行止めじゃしょうがないなぁ。これじゃあ先に進めないもんね♪」

　そしてポツリと、悲しそうに呟く。

「さーて、終わったからもどろっと♪今までの中で一番楽なお仕事だったかも♪」

　そして肩をおとし、とぼとぼと軽井沢駅の方へ引き返していくのであった。

「ルンルン♪」

　……おい……

「なーに？」

　少しはナレーションにあわせろ……

「だって、嬉しいんだもーん♪」

　あのなぁ……

「いくら湖さんでも、自分で越えてないのにボクを歩かせるような真似はできないよね？」

　ぐっ……

「さー終わった終わった♪チョコパでも食べにいってこよっと♪」