駅舎を出たシェラは、蟹が売られている場所目指して歩いていた。

　別にこれといったあてはないのだが、なんとなくこっちに行けば売り場があるような気がする……そんな山勘頼りの考えが、シェラを歩かせていた。

　空はすっきりとした初秋の秋晴れが広がっており、風に乗って潮の香りが運ばれてくる。

「いい天気だなぁ……」

　こんな日には草むらに寝転がって昼寝でもするのが一番いいのだろうが、生憎そんな時間はない。

　出発の時刻は刻一刻と迫ってきているのだ。

「蟹売り場♪蟹売り場♪越前蟹はどっこかな♪」

　シェラは呑気に鼻歌を歌いながら探し回ったが、なかなか見つからない。

　そうこうしているうちにとうとう日本海へでてしまった。

「ありゃりゃ……」

　シェラは時計を見た。もうそろそろ戻らないとまずい時刻になっている。

　流石に指定席までとって乗り遅れるわけにはいかない。

「やっぱ海って行ったら、何か絶叫しないとね♪」

　シェラは大きく息を吸い込んだ。

「湖さんのバカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！」

　そして、ありったけの声を振り絞って、眼下に広がる日本海に向かって絶叫する。

「あー、スッキリした」

　シェラは晴れやかな表情になると、足取りも軽やかに　直江津駅へと戻っていった。