２００３年１月９日。

　今年もあの『駅弁大会』の季節がやってきた。

　駅弁大会とは毎年京王百貨店新宿店７階大催場で開催される『元祖有名駅弁と全国うまいもの大会』のことで、年始の風物詩だ。

　別名『駅弁の甲子園』とも呼ばれ、全国各地から有名駅弁が集い、駅弁ファンや鉄道ファンの舌を満足させている。

　今年の目玉は２つ。

　１つは『駅弁対決』で、今年のテーマは『貝』。

　名乗りを上げたのは山陽本線広島駅の『瀬戸の牡蠣めし』と室蘭本線洞爺駅の『洞爺のホッキめし』。そこに旧渚滑線の復刻駅弁『帆立めし』が加わった三つ巴戦が展開される。

　そしてもう１つのテーマが、台湾からやってくるという駅弁。

　限定数４００食で、早々に売り切れ必至の目玉駅弁だ。

「着いた着いた……」

　午前９時３０分。

　シェラはデパートの入り口の前に立っていた。

　既に並んでいる人の姿がある。

　おまけにテレビカメラの姿もちらほらとあることから、それだけでもこのイベントの人気というものが窺えよう。

「広告ゲットォ！」

　一緒に来たレイアが、広告を持ってシェラの元へとやってくる。

「ナイス、レイア！！」

　シェラは早速どのブースにどの駅弁が配置されているのかを確認した。

　実演販売をやってる関係で、ただでさえ狭い会場が余計に狭くなる。

　そのため、通行に一苦労するので効率よく回るためには、場所のチェックはかかさずしなければならないことなのだ。

「どう？決まった？」

「うん。やっぱり一番最初は台湾の駅弁だよね。買い逃しちゃったらこんなに早く来た意味ないもん」

「そうよね。それにはスタートダッシュが肝心よね」

　シェラとレイアは互いに頷きあう。

　開店時間が刻一刻と迫ってきた。

　店員が再三にわたって『走らないでください』と注意を呼びかける。

　どんどん増えていく人の山。

　静かな緊張が辺りに漂う。

　そして――

　午前１０時。

　ついに開店の時刻を迎えた。

「レイア、行くよ！！」

「わかってる！！」

　シェラとレイアは、人の流れに身を任せながら百貨店の中へと突入した。

　エレベーターがズラリと並んでいる。

　二人はちょうど５基目くらいに乗り込むと、そのまま７階を目指すのであった。