サラリーマンや旅行客で賑わうみどりの窓口の中で、二人の少女が切符を買うために並んでいた。

　ショートの髪の少女は手提げバッグとお土産の入った紙袋を手に、ロングストレートの少女はリュックを背負って旅行鞄を手に持っている。

「……なんであたしがこんな重い荷物を持たなくちゃいけないわけ？」

「仕方ないよ。我慢我慢」

「我慢ってねぇ……」

「あっ、ホラ。ボク達の番だよ」

　不満げな言葉を口に仕掛けたロングの少女の言葉を、ショートの少女がさえぎる。

「次の方どうぞー」

　前の客が切符を買い終わり、切符を販売している初老の駅員が二人を呼ぶ。

　二人はすぐにその窓口前に歩み寄った。

「指定と自由、どっちにする？」

「指定でいいんじゃない？値段的にもそんなにかわらないと思うし」

「そうね。それじゃあ新幹線のグリーン車で。あっ、部長権限で自由席料金にまけといてね。オルドルさん」

「これ、そんなことできるわけないじゃろ」

　いきなり台本外の言葉に、早くもオルドルは苦笑を浮かべた。

「ダメだよイリス。ちゃんと台本どおりやってくれなかったら、ボクが湖さんに怒られるんだから」

「わかったわよ。しょうがないなぁ……」

　イリスはコホンと軽く咳払いをし、気を取り直して既に用意してあった紙を差し出した。

「えーっと。新幹線指定席特急券、上田から大宮まで」

「上田から大宮まで、ですね。１０時４３分発のあさま５１２号でよろしいでしょうか？」

「はい。あ、それから大宮から郡山までの新幹線指定席特急券もほしいんですけど」

「大宮から郡山まで、ですね？ちょっとお待ちください。今、乗り継ぎの電車調べますんで」

　オルドルは軽快な指の動きで、文字を打ち込んでいく。

「あー、それだとつばさ１１１号になっちゃいますけど、よろしいでしょうか？」

「うん！！それでいいです！！」

　すぐさまシェラは力強く頷いた。

「で、両方とも禁煙車で？」

「ええ」

「それで、乗車券は……ええーっと……コレ、なんて読むんでしょう？」

　オルドルは紙に書かれた乗車券の終着駅を見て、首をかしげながら尋ねた。

　余程珍しい駅名らしく、読み方がわからないらしい。

「『かなめた』ですよ」

「かなめた？」

「磐越東線の『要田』ね」

「磐越東線、ですか。いやぁ、こんな遠くまで打ち込んだことないので。ははは」

　シェラとイリスの言葉にオルドルは恥ずかしそうに笑いながら入力していく。

「はい、それじゃあ。こっちが上田から大宮までの新幹線指定席券、それでこっちが大宮から郡山までの新幹線指定席券、あと上田から要田までの乗車券ね」

　イリスは代金を支払うと、６枚の切符を受け取った。

「はい、コレがシェラの分ね」

　そして三枚をシェラに渡す。

「要田かぁ……」

　シェラはおよそ１０年ぶりに訪れる懐かしい地に思いを馳せていた。