駅のホームで待っていた二人は、定刻どおりに到着した新幹線の指定席車両に乗り込み、さっそく大きな荷物を棚の上へと載せた。

「ふ〜。疲れた」

　イリスは肩をぐるぐる回すと、座席を倒して楽な姿勢をとった。

「これから３時間くらい新幹線に乗りっぱなしかぁ。ちょっと疲れるわね」

「何言ってるの。３時間だったら、昔の特急あさまの上野までの時間と同じくらいだよ」

「そっか……それもそうよね」

　イリスは目を閉じ、昔のことを思いだす。

「近くなったわよね」

「うん」

　しばらくの間、二人は無言になる。

「えー、お弁当。おつまみ、サンドイッチにコーヒー、ビール、ジュースはいかがですかー？」

　程なくして車内販売のワゴンがやってきた。

「イリスは何か食べる？」

「ホットコーヒーお願い」

「うん、わかった」

　シェラはイリスの注文を確認すると、ワゴンを呼び止めた。

「すみませーん。コーヒーとオレンジジュース。あ、それから牛タンもください」

「コーヒーにオレンジジュース、牛タンですねー？少々お待ちくださーい」

　ポーレルは注文を重複すると、まずコーヒーを紙コップに注いで、シェラの前に置いた。

「ミルクとお砂糖はどうしますかー？」

「いるわ。ちょうだい」

「はーい。どうぞー」

　ポーレルはミルクと砂糖を渡すと、続いてオレンジジュースとおつまみの牛タンをシェラの前に置く。

　そしてシェラが代金を支払うと、ポーレルはトレードマークのポニーテールを揺らしながら、ワゴンを押して次の車両へと行ってしまった。

「ふぅ、お昼にはまだ早いから、コレくらいがちょうどいいよね」

　シェラはオレンジジュースを飲みながら、牛タンを一切れ口の中に放り込む。

　その様子をイリスがジーっとみつめていた。

「どうしたの？」

　気になったシェラが、イリスに尋ねる。

「……頂戴」

「えっ？」

「その牛タン、一切れ貰うわね」

　言うや否や、イリスは牛タンを三キレばかり掴むと、おいしそうに自分の口の中へと放り込んだ。

「あーっ！？」

　たまらずシェラは大声を上げる。

「何するんだよぉ！！ボクの牛タン！！」

「おだまり！！こんなおいしいもの独り占めしようとするあんたがいけないの！！」

　イリスはさらに牛タンを強奪し、おいしそうに頬張る。

　そんなこんなをしているうちに、大宮は刻一刻と近づいていた。