三春駅で降りた二人は春の寒風吹き荒む中、次の列車がくるまでの３０分近くを待つことになった。

「シェラ〜！寒いじゃないのよぉ〜！」

「そんなことボクに言われても困るよぉ！！それに、そんなこと言ってたら湖さんが『じゃあ、温まるのは人肌が一番だ』とか何とか言ってまたよからぬことを企むかもしれないよ？」

「そ、それは困るわね……じゃあ列車なんか待つのやめて、魔法使って次の駅に飛んじゃおっか？」

「それじゃダメだって。ボクもそうしたいのは山々だけど、後でどんな罰受けるかわからないから」

「ふぅん……あんたってホント真面目よねぇ〜」

　イリスは溜息をついて、白い息を吐き出す。

「のんびり待ってようよ」

　シェラは冷たく冷え切ったプラスチックの椅子に座り、辺りを見回す。

　そしてふと、あることに気がついた。

「あっ、駅舎が新しくなってる」

「そうなの？」

「うん。三春駅の駅舎って、もっとボロっちかったんだけど」

　建て替えられてから２、３年と言う感じがする駅舎を見ながら、シェラは約１０年ぶりに訪れる要田に思いを馳せた。

　そしてまもなくやってきた列車に乗って、終着駅へと向かった。