まだ初夏の陽射しがさし始めたころの、朗らかな季節。

　シェラは上田市の隣の隣にある小諸市へとやってきていた。

　上田駅からしなの鉄道で３０分ほどのところにある小諸駅は、昔となんら変わらない姿でそこに存在している。

　変わったところと言えば、信越本線がなくなり、特急あさまが消滅したため、急行及び特急が止まらなくなったことくらいだ。

　隣の佐久市は新幹線が停車するため、これからどんどん発展していくだろう。

　一方小諸市は、各駅停車しか止まらなくなったために寂れて行くいっぽうだ。

　碓氷峠廃止の影響は、こんなところにまで及んでいた。

「まぁ、しょうがないよね。碓氷峠は信越本線のアキレス腱だったから」

　シェラは軽く溜息をつくと、怪訝そうな表情を浮かべて隣を見た。

「……で、なんで湖さんが一緒にくっついてきてるわけ？」

　何でとはまったく失敬な奴だ。今時の若い娘は礼儀と言うものを知らなくて困る。これだからぺちゃぱいなゴウカンちゃんは……

「えい！！」（ぽかぽかぽか）

　ってーな！！なにすんだ！！

「湖さんがいけないんだもん！！ボクすっごく傷ついた！！」

　そんな表情作るお前のほうが悪い。お遣いも満足に出来なかったクセに。

「アレは詐欺でしょ！！ボク嵌められたんだもん！！」

　あーはいはい。とりあえずこのソフトクリームでも食って落ち着け。

「た、食べ物なんかじゃ釣られないもん！」

　何だ食べないのか？じゃあ俺が……

「う〜っ！湖さんの意地悪！！」

　そうそう。素直にそうやって食っとけばいいんだ。

「で、これからどこへ行くわけ？」

　ココから歩いて１分くらいのところにある、懐古園。

「カイコ園？蚕の養殖でもやってるの？」

　違う違う。わかりやすく言えば、自然公園。

「なぁんだー。……で、なんでそんな自然公園に行くわけ？」

　昔よく来てたから。

「ふーん。懐古、ね。なるほど」

　まぁ、俺もこんなまな板胸娘とデートなんかしたくないんだが……

「デ、デートじゃないもん！！湖さんが勝手についてきてるだけ！！」

　へいへい。じゃあ、行くぞ。

「あっ！？ま、待ってよー！！」