長野駅へついた二人は、改札を抜けると、いったん善光寺口から駅舎を出て階段を降りた。

　湯田中に行くためには長野電鉄を使う必要がある。そのために、長野電鉄の長野駅がある地下に降りなければならない。

「いちおーコンビニでタオル買ってったほうがいいよね」

　シェラの提案で駅前のコンビニでタオルを購入し、準備万端といった様子で地下ホームへと降りていった。

「さーて、次の電車は……あれ？」

　時刻表を確認していたシェラは首を傾げた。

　以前に来た時と時刻表が変わっている。それに、以前はもっと特急電車が走っていたはずだ。

　湯田中へ行くためには特急電車を使わなければ行けないというのに、その特急電車がなければ行くことができない。

　念のために、シェラは駅員に確認してみることにした。

「すみませーん。湯田中へ行くためには、１０時５０分の特急電車まで待たなければいけませんか？」

「ええ。そうですね。仕事をしない君達に、温泉なんかに行かせません！！」

「……だって。確か実際は『申し訳ございません』だったような気がするけど」

「キム部長、温泉に行けない駅員役やらされてるから拗ねてるのよ。早く退散しましょ」

「そうだね」

　二人はそそくさとその場を離れる。現在の時刻は９時４８分。次の電車まで後１時間以上もある。

「どうするイリス？このまま待ってる？」

「バカね。何言ってるのよ。行くに決まってるじゃない」

「どこへ？」

「野沢温泉。だって今回の目的はそっちでしょうが」

「……ええええええっ！？」

　イリスの言葉に、シェラは素っ頓狂な声をあげる。

「アレって間違いじゃなかったの！？」

「当たり前じゃない。私鉄、シェラ、温泉の３拍子がそろったら、ロクな事が起こらないじゃないの。飯山線だって言うからあたしだってオッケーしたのよ」

　どこかで聞いた言葉をイリスは言うと、ハァッとため息をついた。

「まったく、あんたがしっかりしないからあたしがお目付け役にまわされることになるのよ。もうちょっとしっかりしなさい！」

「だ、だって、そんなこといわれたって、『飯山線を取り上げるときは未来のアイドル飯山みらいに引っ掛けて飯山駅を取り上げるのだ☆』とかいってた人が、まさかそんな不意打ちのような駅を取り上げるなんて、思ってもみないよぉ！」

「ああ、それは気が変わったんだって。北陸新幹線開通してからになるみたい」

「なにそれー！！」

　シェラは非難の声をあげるが、当の本人がここにいないのでは仕方がない。

「というわけで、長野駅にチャッチャと戻る」

「ぶぅ〜！！」

　そして二人はＪＲ長野駅へと戻っていった。