列車は終点の越後川口へ向かって、ゆっくりと走り始めた。

「ご乗車ありがとうございます」

　車掌の車内アナウンスが流れる。

　車内は割と混雑していて、立っている乗客の姿も見うけられた。

「……なお、この列車は途中の戸狩野沢温泉で車両の切り離しを行います。終点の越後川口までは前の車しか行きませんので、どうぞご注意ください」

「……だって。ボク達がちょうど降りる駅だね」

「そうね。まぁ、ちょうどいいんじゃないの？」

「飯山よりも重要な駅なのかなぁ？」

　シェラは以前遊びに行った飯山駅のことを思い出していた。もうじき北陸新幹線の駅舎新設も始まるはずで、交通の要としてはこちらのほうが重要度が高いような気がする。しかし同時に、戸狩野沢温泉は長野からの終着駅としても多数本数が存在していた。

　列車はというと、豊野までは信越本線と同じレールを走っていく。しかしそこから分岐して飯山線に入るのだ。

　ガタン、ゴトン

　列車は進行と停車を繰り返し、順調に目的地に向かって進んでいく。

　豊野を過ぎた辺りで車掌が各乗客の切符の確認をしに来たことくらいが珍しいことであったが、進んでいくうちにもっと珍しい光景が広がっていった。

「うわぁ、みてみてイリス。雪の壁だよ。うわぁ、高いなぁ〜」

　シェラは物珍しそうに車窓を指しながらはしゃぐ。

　今は３月、しかも連日ポカポカ陽気が続いている。にもかかわらず、この地方ではまだ雪が溶けずに大量に残っていた。

　２Ｍ近い雪の壁が、線路の左右を囲んでいる。雪国ならではの光景だ。

　やがて飯山も過ぎ、シェラにとっては未知の区間へと入った。

　いつも新しいところに行くときは胸が踊るものである。

　そして２駅くらい通過し、目的地の戸狩野沢温泉駅へとついた。