駅舎を出た二人はとりあえず、近場に温泉があるかどうかを確認しようとした。

　が、その前にバスが目に飛び込んでくる。

　そのバスは湯の花ライナーと書かれていて、『野沢温泉行き』と表示されていた。

「とりあえず、このバスに乗っとけばいいのかな？」

「みたいね。さっさと乗っちゃいましょう」

　二人はバスの中に乗り込む。

「あっ」

　バスの中でシェラが小さく声をあげた。

「どうしたの？」

「大きいのしか持ってないや」

　シェラは財布の中身を確認するが、小銭がない。

　目的地には３００円の運賃が必要なようである。

「ちょっと両替してくるね」

　シェラは１０００円札を持って運転手のところへ行った。が、両替機らしきものはどこにも見当たらない。

　仕方がないので、直接運転手に両替してもらうことにした。

「あのーすみません。両替してほしいんですけど」

「降りるときにおつり出すから」

　白髪の運転手はぶっきらぼうに答え、シェラを見る。

「くっそー！！俺にこんな役おしつげやがって、二人そろって温泉でしっぽり濡れ場かよ！後で俺の実験台に……」

「えい！」

　すかさずシェラは手とうを振り下ろし、運転手を黙らせる。そして何事もなかったかのように座席へと戻っていった。

「どうかしたの？」

「エミルってばエロエロパワー全開だったからちょっと教育的指導をしてきただけだよ」

「ふーん」

　程なくしてバスは走り出した。