走り出したバスは、途中で感知式信号の感知される手前で止まってるワゴンに激しいクラクションを鳴らして大声で運転手に向かって悪態をついたというトラブルがあったものの、順調に雪の壁に覆われた道路の上をスイスイと進んでいった。

　そして目的地である野沢温泉、終点の真湯のひとつ前まで来ると、二人は運賃を払って降りた。

「うわぁ〜。ついに来ちゃったね」

「そうね」

「温泉の臭いがする〜」

　シェラは辺りを見回す。

　奥に見える山は雪の帽子を被っており、雪に囲まれた温泉街は人の往来がそれなりに激しい。

「さてと、銭湯とかどこにあるのかな？」

「バカねぇ〜。なに分けわかんないこと言ってるのよ」

　シェラの言葉に、イリスはハァッと深い溜息をつく。

「温泉地って言ったら、外湯めぐりじゃないの」

「外湯めぐり？でも別所は午前１０時とかで終わっちゃってたような？」

「別所は別所。野沢温泉は野沢温泉。何でもかんでも別所を基準にするのはよくないわよ？」

「う、うん……」

「というわけで、レッツらゴー☆」

「あ、ちょっと待って」

　シェラはバス停に近づくと、時刻を確認する。現時刻は１１時２０分。１２時１０分が赤字になっており、その次は１４時３０分となっている。目を下に移すと赤字は１／１〜３・９、３／２０〜２１運行と書かれていた。

「今日は３月９日だから……あ、ちょうど運行してるね。よかったよかった」

「確認終わった？それじゃあ行くわよー」

「あ、うーん」

　シェラはイリスの元に駆け寄る。

　そして二人は外湯めぐりを開始した。